【名波浩の視点】メダル獲得へ、五輪代表が短時間でこなすべきタスク
厳しい予選を戦いながら、着実に成長を遂げた五輪代表。本番ではメダル獲得が期待される。 U-23日本代表が、見事ロンドン五輪出場を決めた。
アジア最終予選のバーレーンとの最終戦。五輪出場の可能性をわずかに残すバーレーンは、高いラインを保って、立ち上がりから激しいチェックを繰り返してきた。そうした中で、引き分け以上で五輪出場が決まる日本は、攻めるのか、それとも絶対に点を与えないというスタンスで守備に徹するのか、序盤はその戦う姿勢に注目していたが、選手たちの意識は前者だった。積極的に仕掛けて「攻めよう」という気持ちの強さが感じられた。
ただ前半は、相手のブロックを思うように崩せなかった。2ボランチの山口螢、扇原貴宏を中心にセカンドボールは拾えていたものの、1トップの大津祐樹と2列目の東慶悟、清武弘嗣、原口元気の3人が同じ場所、同じサイドに固まり過ぎて、分散が遅かった。密集した状況からでもどうにか崩して、自分たちの技術を見せようという思いもあったのかもしれないが、敵の厳しいマークをはがすことができず、攻めあぐねた。
それが、後半は一転、個々の球離れがよくなり、非常にシンプルなプレイから攻撃のリズムが生まれた。そのうえで、両サイドへの切り替えも早くなり、ピッチを広く使った展開から決定機を演出。ボックス内にも何人か選手が飛び込んでくるようになって、先制ゴール、2点目と、結果につながった。
このチームは、最終予選を戦いながら本当に成長してきたと思う。守備陣では、センターバックの鈴木大輔と濱田水輝、そして山口の3人が飛躍的に伸びた。バーレーン戦でもそうだったが、両サイドバックをあれだけ攻撃へとうながせたのは、彼ら3人の功績だろう。
特に山口は、短期間で一気に伸びた選手。扇原という良きパートナーを得たこともあるが、プレイの"決断"が急速に進歩した。球離れはもちろん、最短距離で行けるボールアプローチは抜群。相手に考える時間を与えないプレイぶりは、ピカイチだ。
その山口を中心に、ビルドアップも進化。右が厳しければ左、左が厳しければ右、という形がスムーズにできるようになってきた。この日も2点目は、左からの攻撃を試みてうまくいかなかったとき、一度右に展開してから再度、左にボールを動かして崩していった。今後、世界を相手にしてもより迅速にやれるよう、意欲的にトライしていってほしい。
とにかく、守備に関してはチーム全員の意識が高い。ピッチに立った11人が誰ひとりとして手を抜かないし、労を惜しまずに走っている。アウェーのシリア戦で敗退してからは、泥臭く、懸命に体を投げ出して決定的なピンチも防いできた。こうしたことは今後も継続してほしいし、強い相手と数多く試合をすることで、より強固な守りを築いていってもらいたい。
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著者プロフィール
名波 浩 (ななみ・ひろし)
1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍