【なでしこジャパン】ベテラン・宮本ともみの存在感とレギュラーメンバーの危機意識 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

 今回の合宿はそんな選手たちにとって、なでしこジャパンと対戦するという夢のような場所であったはずだ。胸を借りるように、全力でぶつかっていった。

 ひるがえって、なでしこジャパンへ目を向ける。確かに、フルメンバーではない。たいていの選手が本来と異なるポジションをこなしている。チャレンジメンバーが混じってのチーム構成でもある。オフ明けのコンディション――それもあるだろう。にしても、である。

 条件はすべてのカテゴリーの選手にあてはまることで、なでしこジャパンの選手にだけ不利なわけではない。短い時間ながら全カテゴリーと対決した際には、なでしこは無得点に終わった。なでしこチャレンジと、U-17女子代表には0-1で敗戦を喫し、U-20 にはドローという散々な結果だった。

「下の世代の選手たちがあれだけがんばっているのに、ウチらがこんなんでいいのかと、宮間(あや)とも話をしました」とは大野忍だ。宮間も「物足りなさはみんな持っている。今一度、自分たちの足元を見つめるいい機会になった」と厳しい表情を浮かべた。

 最終日には、なんとか「やるべきことはやれた」(大野)が、“物足りない”では表現しきれない中途半端さがあったことは否めない。技術や戦術、コンディションの問題ではない。なでしこジャパンという存在は、すべてのカテゴリーのお手本であり、目標だ。どんな状況であれ、“代表選手”はその光を示し続ける責がある。気迫が空回りしてしまった部分もあるが、ほめられた内容ではなかった。

「コンディション不足は声掛けで補うことができるもの。それぞれが自分からやろうとしないとダメ。全員がもう一度本気でやらないとロンドンで金メダルなんて遠いと思う」という宮間の言葉がすべてを物語っていた4日間だった。

 この後、2月末からはポルトガルでのアルガルベカップに参加し、ノルウェー、デンマーク、アメリカといった強豪と対戦するなでしこジャパン。そこにはこの合宿から新たなメンバーが選出されるかもしれない。ヨーロッパ組も合流する。やるべきことは山積している。

 ロンドンまでの短い期間、無駄にできる時間などないはずだ。世界から注目される初めての舞台になるアルガルベカップでどんなサッカーを見せるのか。今一度、自分たちのポジション、現状を見つめ直してもらいたい。

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