【日本シリーズ】横浜スタジアムが凍りついた初球 ソフトバンク正木智也「幻の一発」の衝撃 (2ページ目)
打球は左翼ポールのはるか上を通過していった。バックネット裏からは本塁打にも見えたが、左翼線審の両手が大きく広げられた。
ファウル──日本シリーズの幕開けを告げる初球先頭打者本塁打は、幻に終わった。
「あれが入っていればカッコよかったんですけどね。とにかく思いきって振ってやろう。ファウルでもいいから引っ張ってやろうと思っていたら、ファウルになっちゃったんですけど(笑)。もし狙い球と違っていても、思いっきり空振りしてやろうと思っていました。フルスイングをして、それで相手が怖がれば一番いいから」
その言葉からは、打席に立つ正木の強烈な意志が伝わってくる。
【1番抜擢が変えた運命】
正木は今季、プロ5年目にして大きな飛躍を遂げた。
慶應大からドラフト2位で入団。過去には開幕戦で2度、5番打者を任されるなど、期待は大きかった。しかし、度重なる故障に苦しみ、なかなか一軍に定着できずにいた。今季もオープン戦終盤に右足裏の蜂窩織炎を発症し、戦線離脱を余儀なくされた。
「なんでオレばっかり......」
そんな思いが頭をよぎり、続く不運を恨んだこともあったという。開幕一軍を逃し、昇格したのは5月になってから。それでも、そこから正木の野球人生は大きく動き始めた。
本人も「最初はびっくりした」と振り返る1番打者への抜擢。だが、その起用が見事にはまった。
俊足巧打型とは一線を画す、長打力を最大の武器とする新時代のリードオフマン。これまでのソフトバンクにはいなかったタイプの1番打者として、打線を牽引した。
昨季までの通算本塁打は12本。それが今季だけで28本塁打を放った。うち7本が先頭打者本塁打。球団記録を更新するとともに、2007年に巨人の高橋由伸が記録したシーズン9本のプロ野球記録にも迫った。
その高橋は2007年のシーズン開幕戦で、史上2人目となる「開幕戦初球先頭打者本塁打」を放っている。奇しくも、その舞台は横浜スタジアムだった。
「僕、小さな頃は巨人ファンだったので、由伸さんが先頭打者本塁打の記録を持っていたのも、開幕戦の初球のハマスタの一発も覚えています。小2になる頃だったので、ちょうど野球を始めた時期でした」
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