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【プロ野球】「監督が褒めてたぜ」は、近藤貞雄が記者に頼んだ仕掛け テスト入団の守備職人を覚醒させた"人心掌握術" (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Yasuyuki Takahashi

【貫いたエンターテイナー精神】

 近藤はナインと接するなかで、「日本ハムは真面目でいい子ばかり」と感じていた。そこで、「はみ出し野郎」と称した捕手・若菜嘉晴(前・大洋)、左腕・角盈男(前・巨人)を獲得してチームに刺激を加える一方、自らも先頭に立って、チームを「盛り上げよう」とさまざまなパフォーマンスを見せた。

 のちに近藤は、たとえ試合に負けても、観客が「面白かった」と言って帰れるようにと、あえて派手な振る舞いをしていたと明かしている。

「お客さんのことは意識していましたね。近藤さん、夏でもハイネックのアンダーシャツを着ていたんですけど、それは『満員なら5万人。その半分は女性のお客さんだから』ということなんです。『女性のお客さんに、ジジイの首のシワなんか見せられねえ』って。僕が『ホントですか?』って聞いたら、『本当だ。野球選手はかっこよくなきゃいかん。だからユニフォームをちゃんと着こなせよ』と言われました」

 もちろん、野球そのものでも観客を意識し、打ち勝つ野球を目指した。だが、終わってみればチーム得点はリーグ最下位。投手陣では西崎幸広が16勝、津野浩が11勝を挙げた一方、前年に西崎と並んで最多勝に輝いた松浦宏明は右ヒジを痛め、わずか1勝に終わった。

 松浦はキャンプでの球数制限が合わず、そのうえ故障にも見舞われたことで、近藤が掲げた「私の野球」も疑問視されるようになった。前年リーグ1位だったチーム防御率も3位に後退。チームは借金19を抱え、前年の3位から5位へと順位を落とした。

「近藤さんは意外と大雑把で、ミーティングにもほとんど出てこないんです。1回だけ出てきたことがあって、その時はクリーンアップが数試合、からっきしダメだったんです。そしたら、『3番、4番、5番! 今日打たなかったら、7番、8番、9番に代えちゃうぞ!』って。それだけ言って出て行ったんです。『面白い監督だなあ』と思いましたね。でも当時、ベンチ入りしている選手全員を生かそうとする監督は、なかなかいなかったですから」

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