しなる右腕から放たれる"アニメの主人公"のような快速球 無口なエース・岸孝之はまさに難攻不落の強者だった (2ページ目)
なんだか、アニメを見ているようだった。一見、ふつうの大学生よりも細身の体型で、後ろ髪をなびかせながら、なんでこんなプロみたいなボールを投げられるのか。「21世紀の快腕」って、こういうアニメの主人公みたいなヤツなのかもしれないな......。隔世の感を覚えながら、球場を後にしたものだった。
東北福祉大関係者が恐れていた現実がやって来たのは、その2年後、2006年のことだった。4年生となった岸は、さらにすごみを増していた。
春のリーグ戦で最速152キロ、アベレージ140キロ後半の快速球に、落差が激しいカーブに、キレ味鋭いスライダーを駆使。宿敵・東北福祉大を相手に3連投し、リーグタイの1試合19奪三振をマークするなど、快刀乱麻のピッチングで絶対王者の35連覇を阻止し、18年ぶり優勝の立役者となり、一躍、ドラフト1位候補に躍り出た。
【全身のしなりから放たれるストレート】
岸のもとを訪れたのは、そんな春のリーグ戦の最中だったと記憶している。ウォーミングアップで外野を駆ける足腰の弾力が、人間離れして見えた。なんというバネか......。まるで「バンビ」のようだ。
ブルペンにやって来て、立ち投げの初球で圧倒された。腕がしなるというのは、こういうことか!
腕だけじゃない。長い四肢の連動で、すべてがしなる。全身がしなり終えると、最後に指先からボールが放たれる。もう腕は振り終えているのに、まだボールが出てこない不思議なタイムラグ。これが"球持ち"というやつか。
まず、捕球のタイミングが難しい。腕の振りに合わせると、ちょっと早い。ならばと、ちょっと遅らせようとすると、今度は快速球に弾かれてしまう。捕球するのにこれだけ苦労するということは、打者だってタイミングを取るのは難しいはず。
「なんだかよくわからないうちに、差し込まれているんですよ。速いとか、すごいとかじゃないんです。強いて言えば、"組めない"ですかね。たとえば相撲をやって、何度やっても立ち合いが合わないみたいな......。それに、あのカーブでしょ」
のちにプロに進んだある強打者は、このように岸を称していた。
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