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早稲田大を不合格となった湯浅京己は周囲の反対を押しきり独立リーグへ わずか1年で阪神入団を果たした (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Takahiro Kikuchi

 2025年に一軍に復帰。湯浅が思い描く理想のストレートとは、かけ離れたボールだった。それでも、今季は「去年よりずっと感覚がいい」と湯浅は前向きに語っている。まさに、新しい自分をつくりあげている途中なのだ。

 そして、もうひとつ。湯浅はサポートしてくれた周囲への感謝の思いを内に秘めている。

「病気をして、たくさんの人に支えてもらったからこそ、今の自分がいます。まだ復活したとは言えないですけど、たくさん投げている姿を見せて、恩返しをしたいですね」

 湯浅ほど裏方の心情が理解できるプロ野球選手は珍しいだろう。もし10年前のマネージャー時代の自分に声をかけるとしたら、どんな言葉をかけたいか。そう尋ねると、湯浅は少し考えてからこう答えた。

「『今を楽しめ』って言いたいですね。なるようになるじゃないですか。高校は高校で楽しかったし、その時、その時で違う楽しさがあると思うんです。今も、『今を楽しもう』と思って野球をやっていますし。高校時代のマネージャーの仕事も、今思えばやってよかったなと感じます。しんどいことがあっても、乗り越えたら『やってよかった』と思える時がくるはずですから」

 その言葉は10年前の自分に語りかけると同時に、今の自分自身に言い聞かせているようでもあった。

 湯浅京己はどんな困難を目の前にしても、前を向いて自分の道を踏みしめていく。


湯浅京己(ゆあさ・あつき)/1999年7月17日生まれ、三重県出身。聖光学院高では、ケガのために当初マネージャーを務めていたが、のちに選手へ転向し、その潜在能力を開花させた。BCリーグ・富山を経て、2018年のドラフトで阪神から6位指名を受け入団。力強いストレートとフォークを武器に頭角を現し、22年には43ホールドを挙げて最優秀中継ぎ投手に輝いた。23年はWBC日本代表として世界一に貢献。しかし24年に胸椎黄色靱帯骨化症を発症し手術を経験。それでも2025年に復帰し、再びブルペンの柱として活躍するなど、不屈の精神でキャリアを切り拓いている。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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