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「納得できる環境でプレーしたいんで...自分の一生ですから」 18歳の内海哲也は巨人で投げることだけを見据えていた (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Masahiko Abe

 どうやら、編集部からの伝え方がよくなかったようだ。そんなやり取りのさなかに現れた内海だったが、その態度に今度はこちらのほうが驚かされた。

「内海、おまえのボール受けてくださるそうだから、準備しろ」

 ちょっとあわてた様子の部長先生の指示にも、「はい、わかりました! よろしくお願いします!」と、まるであらかじめ聞いていたかのように、なんの動揺もなく、こちらに向かってあいさつまでして、悠然とグラウンドへと出ていった。「高校生なのに、腹の据わったヤツだなぁ......」と深く感心したものだ。

【どんな状況でもやるべきことはやる】

 高校3年秋の、もうすぐドラフトという時期。日が短くなって、放課後のグラウンドはもう薄暗くなってきている。日本海からの冷たい風が吹き抜けるなか、ブルペンで内海が来るのをひたすら待った。

 外野後方で走り込み、体をほぐし、ストレッチで関節の可動域を広げている。そんなウォーミングアップを繰り返す内海の姿が目に入る。30分が過ぎ、やがて1時間が経っても......まだブルペンに姿を現さない。

 あたりはだいぶ暗くなり、コンタクトレンズの私は次第に厳しい状況に追い込まれる。ハラハラしながらも、こんな寒い中で投げるのだから、十分すぎるほど体を温めて、万が一にも故障することがないように、投手にとっては当たり前の心がけを実践しているだけなんだと気づいた。

「いいピッチャーって、こうなんだよな......」

 そうつぶやきながら、内海の意識の高さにあらためて感心したものだ。

 そして、待ちに待った内海の立ち投げの初球は、"山なり"のボールだった。

「そりゃそうだ」

 ミットを構えた正体不明の男を相手に、いきなり全力で投げるわけにはいかないだろう。こちらだってドキドキだ。この10年ほどは草野球をする程度だったのに、いきなり目の前にあの内海が立っているのだから......。

 こちらの様子をうかがうように、ボールの軌道を少しずつ下げてくる。「パチン!」といい音をたてて捕ると、ちょっと力を入れて投げてくれる。そしてまた「パシン!」と音が出ると、またちょっと力を入れてくれる。

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