【WBC2026】「悩め、悩め、たくさん悩め」 千賀滉大の金言が種市篤暉を侍ジャパンの若きエース候補へと変えた (2ページ目)
奪三振率10.41は、"師匠"の千賀が同年にマークした11.33には及ばなかったものの、このシーズンに100イニング以上投げたパ・リーグ投手のなかで奪三振率が「10」を超えたのは、このふたりだけだった。ちなみに、フォークで奪った空振りに限れば、種市は千賀や山本由伸(当時オリックス/現ドジャース)を上回る数値を叩き出していた。
「もともとフォークは全然落ちなくて、武器になる球種ではありませんでした」
種市の話を聞いて思い出したのが、千賀の言葉だ。
「極端に言えば、左肩をキャッチャー方向に向けたまま、体を開かせずに腕を振れば、フォークは勝手に落ちるんです」
要するに体の開きを抑えることが重要ということ。つまり種市は、千賀から指摘された欠点を克服して飛躍につなげたのだった。
【上野由岐子からのアドバイス】
なかでも思い出深いのが、この翌年の2020年1月の鴻江合宿自主トレだ。
投球練習をする種市の表情は冴えない。一見すると強いボールを投げているように見えるが、何か物足りない。捕手からも「ナイスボール」の声は上がらない。無駄な力が入り、フォームが崩れていた。力めば速いボールは投げられるが、そこに真の"強さ"はない。
なぜバランスよく投げられずに、目一杯の力を込めてしまうのかと種市に尋ねても、「自分でもわかりません」と視線を落とすだけだった。
その時、千賀が声をかけた。
「走って忘れようや」
外野に誘い出し、両翼のポール間をふたりで走り始めた。
その夜、映像で自身の投球動作を見返した。以前はできていたことが、できなくなっている。これほど悔しいことはない。じっとモニターを見つめる種市の表情は、今にも泣き出しそうだった。
「悩め、悩め、たくさん悩め」
千賀が種市の背中をポンと叩いた。
投球映像を見返すうちに、鴻江氏と千賀の意見は一致した。
「右手はその場に置く感じでいいんじゃないか?」
捕手側から撮影したカメラで確認すると、種市の右手がテイクバックの際に力んでしまうことで背中のラインよりうしろに出てしまっていたのだ。
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