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「おまえに150キロは出せない」から始まった覚醒 澤村拓一を変えた叱責と中央大ブルペン (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

【衝撃が肩までくるほどの球威】

 まだ寒い時期だったので、室内練習場でのピッチングになった。照明が弱めで、外からの光もあまり届かない。薄暗い室内ブルペンは、スピードが2倍も速く見える。

 そうでなくても、今日の相手は「150キロ」である。ひるみそうになる心を奮い立たせて、ホームベースの後ろに腰を下ろす。
 
 183センチ89キロ(当時)が、さらにもうひと回り大きく見えた。それにしても、この下半身の充実はなんだ。引き締まっているのに、そのボリュームに圧倒される。

「筋トレでつくりました! スクワットなら200キロいけます!」

 初球から腕の振りがうなる。ボールがそのままの大きさの「光線」になって、ミットに突き刺さる。一瞬の気おくれに、ミットの反応も一瞬遅れ、ボールを手の平の位置で受けて、はじいてしまう。
 
 怖いボールだ......。
 
 もう一度、太い腕の振りがうなって、一瞬ボールが見えただけで、ミットにガツーン。

 いや、たぶん見えていない、見えたような気がしただけだ。たった2球で手のひらがもうジンジンしている。

 それにしても、なんて球威だ。衝撃が肩にくる。

 足首がちょっと痛むと言っていたが、それでも全力で投げてくれる気持ちが、何よりうれしい。

 こっちも命がけでやっているんだ。加減されるのがいちばん悲しい。
 
 モーションを起こしたら、一瞬も気の抜けないボール。

 上げた左足を下ろし始めるあたりから、こっちに向かって全身がグーンとズームアップしてくる。これが怖い。ミットを下ろしていたら、間に合わない。捕球の瞬間、手の平をギュッとねじるようにして、やっとミットが止められる。

「200キロぐらい出てるんじゃないのー!」

 なかばヤケクソで発した叫びを、マウンドの澤村は笑って受け止めてくれたが、かたわらの清水達也コーチ(現監督)は、「抑えて、抑えて......」と、その気の剛腕を、なだめにかかってくれていた。

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