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【プロ野球】「焦っても結果は出ない」 苦悩の春から成長の夏へ、ベイスターズ・竹田祐が語るプロ初勝利までの軌跡 (3ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi

【社会人とプロとの大きな差】

 竹田が感じる社会人時代とプロとの大きな差は練習量にあるという。誤解を恐れずに言えば、量に関しては社会人のほうが多かったという。

「でもプロはひとりでトレーニングをする時間が多くて、その時間の使い方が全然違うと思いました。振り返れば、ひとりでトレーニングする時間と量が多く、ケアがあまりできていなかったように思います。気持ちばかりが先走ってしまって、オーバーワークになってしまった感じというのか、早く一軍に上がりたいなという思いばかりで......」

 チームとしても個別のトレーニングに関して管理するのは限界がある。ましてや社会人を経験したドラ1ルーキーに対し、自主性を重んじた。ここは自分自身で乗り越えるしかない。焦る気持ちを抑え、やるべきことを変えることなく個人練習の量を調整し、ケアを増やした。そしてフォームを崩して持ち直した経験は社会人時代にあったので、肝となる右足の軸を大切に、股関節の柔軟性を注視しながら再構築を施した。

 そして周りの人間からのアドバイスにより、竹田は徐々に本来の調子を取り戻していった。

「入来(祐作/ファーム投手)コーチからは試合を想定した組み立てや、漠然と投げるのではなく細かいことを考えなさいと指導されました。ずっとブルペンの後ろから見ていただいて、勉強になりました。あと森唯斗さんからは、試合中に『あそこに投げてみろ』などのアドバイスをいただき、また食事にも何度も誘ってもらいお話をさせてもらって本当に感謝しています」

 そして竹田が「これでいけるかもしれない」と手応えを感じたのは、初の一軍登板の直近の試合になった8月9日、イースタンリーグのロッテ戦である。竹田は140キロ台後半のストレートを軸に、7回、93球、6安打、5三振、無失点の好投で勝ち投手になった。

「この試合で、真っすぐで空振りが取れるようになったんです。自分のなかで上がってきたなと感じました。ただこれじゃまだ打たれるんじゃないかって思いましたし、次のファーム戦でまた頑張ろうという感じでしたね」

 この試合後、ほどなくして一軍から連絡が入るわけだが、竹田はメディアに「一軍登板はまだ先になると思っていました」と語っている。突如として巡ってきたチャンスで好投し、プレッシャーを払いのけ見事に初勝利を飾った。

つづく>>


竹田祐(たけだ・ゆう)/1999年7月5日生まれ。大阪府出身。履正社高では3年春の選抜で準優勝。高校卒業後は明治大に進み、東京六大学リーグ通算11勝をマーク。その後、三菱重工WESTに入社し、2024年のドラフトでDeNAから1位で指名され入団。25年8月16日の中日戦でプロ初登板、初先発、初勝利を挙げた

著者プロフィール

  • 石塚 隆

    石塚 隆 (いしづか・たかし)

    1972年、神奈川県出身。フリーランスライター。プロ野球などのスポーツを中心に、社会モノやサブカルチャーなど多ジャンルにわたり執筆。web Sportiva/週刊プレイボーイ/週刊ベースボール/集英社オンライン/文春野球/AERA dot./REAL SPORTS/etc...。現在Number Webにて横浜DeNAベイスターズコラム『ハマ街ダイアリー』連載中。趣味はサーフィン&トレイルランニング。鎌倉市在住

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