【プロ野球】「焦っても結果は出ない」 苦悩の春から成長の夏へ、ベイスターズ・竹田祐が語るプロ初勝利までの軌跡 (2ページ目)
【7回無失点の好投でプロ初登板初勝利】
ジェットコースターのような時間の流れ。ただ試合当日は、投球直前までは極度に緊張し、記憶はあやふやだったという。
「ブルペンでは緊張しすぎてずっと吐きそうでしたし、あんまり覚えてないんですよ」
しかし、いざマウンドに立つとカチッとスイッチが入った。スッと冷静になり、周囲の景色が鮮明になった。このあたりは履正社高、明治大、三菱重工Westといった名門チームでエースを張り、大事な試合で投げてきた経験がある。注目を浴びるマウンドこそが自分の場所だ。
バッテリーを組む1歳上の山本祐大からは「自分の思った球を全力で投げてこい」と背中を押された。竹田が試合を振り返る。
「投げていくなかで、ファンの方々の歓声や相手の応援が耳に入ってきて、『めっちゃ楽しいな』と思いながら投げていたんです。祐大さんのリードに任せて思い切り腕を振れましたし、気づいたら終わっていた......そんな感じでした」
テンポのいい投球で7回を2安打、6奪三振、無失点で、プロ初登板、初先発、初勝利を飾った。これはチームのドラフト1位投手として山口俊以来、19年ぶりの記録となった。
以降も快投を見せ、シーズン終盤のローテーションの一角として存在感を示すことに成功した。ドラ1投手の面目躍如といったところだろうか。
それにしても気になるのは、春先の不調である。ストレートの出力がまったく出ない状況に陥り、ファームで一軍昇格までに14試合に登板し、2勝5敗、防御率は3点台だった。
竹田に原因を聞くと、声のトーンを低くし次のように答えた。
「特別なことがあったわけではなく、コンディションがよくない状況でした」
そう言うと竹田は口を閉じた。もしかしたらドラ1としての責任がプレッシャーになっていたのだろうか。そう問うと、しばらく考え竹田は口を開いた。
「たしかに、前がかりにやり過ぎていたと思います。プロで勝負するために速い球を投げたいとか、いらんことを考えることが多くて。いいところで力を発揮できなくなるというか、ちょっとしたズレが、大きなズレになってしまった感じでした」
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