【プロ野球】サトテルの進化が止まらない! 名コーチ・伊勢孝夫が語る「三冠王獲得」への絶対条件 (2ページ目)
もともとバットに当てさえすればスタンドまで運べるだけのパワーを持っている。実際、狭い球場ではレフト方向への打球でもスタンドインする光景を自ら経験し、力まずとも本塁打を打てるという手応えを得たのだ。その証拠に、打撃は明らかに昨年までのような"引っ張り一辺倒"ではなくなっている。
【さらなる飛躍に向けての課題は】
では課題は何か? これは本塁打量産だけでなく、打率向上にも通じる話だが、「正確さ」と「バットスピード」である。
以前、私はこのコラムで「佐藤はホームランを打っても40本止まりだろう」と言ったことがある。その理由は、一発で仕留める精度に課題を残していたからだ。まだ甘い球を打ち損じる場面も多く、内角高めを意識させられたあとに外角低めの落ちる球を振らされ、空振り三振に打ちとられるシーンも何度も見てきた。この点が、好調時の村上宗隆(ヤクルト)との大きな差である。
そしてもうひとつ求められるのが、スイングスピードのさらなる向上だ。大谷翔平を比較対象にするのは酷かもしれないが、彼が量産体制に入った時のスイングは圧巻だ。甘い球を逃さず、誰よりも速いスイングスピードで叩き込む。そして、その正確なミート力が本塁打を量産する最大の要因となっている。
もちろん佐藤に、今すぐ大谷のようなスイングをしろというわけではない。ただ、彼がもう一段、いや二段上のレベルへとステップアップするためのカギは、この「正確なミート力」と「スイングスピード」にあると考えている。
余談だが、大谷のスイングスピードがあそこまで速くなったのは、本人の努力はもちろんだが、ほかチームの投手たちがその必要性を突きつけたからでもある。150キロ後半の速球を克服しなければならない状況に追い込まれた結果、いまのスイングが磨かれた。言い換えれば、投手たちが大谷を育てたのだ。
では、佐藤を育てるほどの投手が、今のセ・リーグにどれほどいるのか。正直なところ、皆無に等しいと言わざるを得ない。野球という競技は、レベルアップのためにライバルは欠かせないのである。
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