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甲斐拓也の巨人移籍で小林誠司は何を思ったか? 「拓也よりも勝っているものがあるとすれば...」 (4ページ目)

  • 長谷川晶一●文 text by Hasegawa Shoichi

 ちょうどこの取材前日の試合でのことだ。好機で打席に立った小林はスリーバント失敗後、赤星優志とともに試合途中での交代を命じられたばかりだった。いい時ばかりではない。辛い時、大変な時も経験していること。それが自分の強さであり、武器である。小林は、そう考えている。

「人間って、いい時よりも、悪い時にその人の本当の姿が出るっていうじゃないですか。だからこそ、そんな時こそ、ベンチの中でも決して腐らずに誰よりも大きな声を出す。そのときにできることをしっかりやる。言葉で言うのは簡単だけど、それはとても難しいこと。その点は、拓也よりも僕の方がそういう経験を積んでいるんじゃないのかな?」

 これまでの発言に見られるように、彼の姿勢は常に、「決して腐らずに、できることを全力でやる」というスタンスで貫かれている。その点を指摘すると、「そうですね」と言い、小林は続ける。

「うまくいかないからといって、腐ってしまったり、あきらめてしまったりするのはとても簡単なことだと思うんです。でも、僕はそうはなりたくない。辛い時、大変な時こそ、きちんとしていたい。そんな思いは強くありますね」

 本人の言葉にあるように、どんな環境下にあっても、小林は決して腐らず、決してあきらめず、常に前向きに、自分のできることに取り組んでいるように見える。その点を指摘すると、やはり「その通りですね」と言いながら、小林は後輩とのエピソードを披露した──。

つづく>>


小林誠司(こばやし・せいじ)/1989年6月7日生まれ、大阪府出身。広陵高から同志社大、日本生命を経て、2013年ドラフト1位で巨人に入団。強肩の捕手として活躍し、16年から4年連続してセ・リーグの盗塁阻止率トップを記録。また菅野智之とのバッテリーは「スガコバ」と呼ばれ、最優秀バッテリー賞を2度受賞。17年には侍ジャパンの一員として第4回WBCに出場し、攻守で活躍した。近年は出場機会を減らしているが、リーダーシップと高い守備力でチームに貢献している

著者プロフィール

  • 長谷川晶一

    長谷川晶一 (はせがわ・しょういち)

    1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターとなり、主に野球を中心に活動を続ける。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。主な著書に、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間 完全版』(双葉文庫)、『基本は、真っ直ぐ──石川雅規42歳の肖像』(ベースボール・マガジン社)、『いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『中野ブロードウェイ物語』(亜紀書房)、『名将前夜 生涯一監督・野村克也の原点』(KADOKAWA)ほか多数。近刊は『大阪偕星学園キムチ部 素人高校生が漬物で全国制覇した成長の記録』(KADOKAWA)。日本文藝家協会会員。

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