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【中畑清×篠塚和典】同期のふたりが明かすドラフト1位をめぐる裏話 厳しかった伊東キャンプには「感謝」 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

篠塚 でも、僕は喜べなかったんです。行くつもりはなかったですから。

中畑 ショックが大きくなってしまうから、その言い方はやめてくれよ(笑)。今の発言はちょっと撤回してくれない?

篠塚 わかりました。撤回します(笑)。でも行くつもりがなかったというのは、肋膜炎を患っていたのと、漫画『巨人の星』が流行っていて、そのなかで出ていたような巨人の厳しい練習に体力的についていけないのでは......という不安がありましたからね。

 ノンプロの日本石油(現ENEOS)に行くことが決まっていて、ミスター(長嶋茂雄氏)がつけた背番号「3」をもらっていましたし、2年くらいはしっかりと体を作って、それからプロに挑戦するというイメージを描いていました。なので、巨人から指名された時はみんな喜んでくれましたが、自分は体に対する心配が一番にあってあまり喜べなかったんです。

【今のプロ野球の練習に感じること】

中畑 初めてシノに会った時は病弱な印象があったけど、実際はめちゃくちゃ体が強いんだよね。冗談じゃないよって(笑)。1時間くらいの特守(マンツーマンノック)でも全然へばらないし、長距離走も飄々(ひょうひょう)と走る。「どこが肋膜炎で入院した選手なんだ?」って思ったよ。

篠塚 最初に中畑さんを見たときは体の大きさに驚かされましたし、「プロに入るような選手たちはやっぱり体格がすごいな」と。それと、中畑さんはやはり元気がいいので、気持ちだけは負けないようにと思っていましたね。

中畑 でも、あの時代があったからこそ、その後の人生があるわけだから。

篠塚 どの選手も、ユニフォームは真っ黒になっていましたよね。

中畑 練習量は多かったし、コーチが選手をだましてでも練習をさせるというか、そういう環境があったよな。それで一流になった選手が、コーチに感謝していた。今は決められた時間で決められたように練習し、淡々と終わってしまう。練習量も少ない。

 私から見ると、「これではうまくなっていかないだろうな、ひと皮むけないだろうな」という環境。巨人もそうだし、いろいろな球団が「選手にケガをさせてはいけない」みたいなメニューを組んで練習している。強い選手というか、生き残る選手がなかなかいない。昔と比べて体は大型になっているけど、上っ面だけで中身が薄いというか、弱いっていうのかな。

篠塚 基本的に弱いですよね。三軍だとか環境は整っているんですけどね。やはり指導者には、ある程度の厳しさが必要だと思いますし、やらせなければうまくなりません。昔のいい部分もあるわけで、そこは伝統として継続してほしいですね。

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