屋鋪要は関根潤三の育成術を令和でも通用すると断言「怖かったけど、理不尽ではなかった」 (2ページ目)
【厳しく怖い監督だった】
「バレーボール女子代表の小島監督という方がいらっしゃいますよね......」
なおも、「関根監督の思い出」を尋ねていると、屋鋪は意外な人物の名前を口にした。彼が口にした「小島監督」とは、ミュンヘン五輪や幻に終わったモスクワ五輪など、四期にわたって女子バレー日本代表チームの監督を務めた小島孝治のことだ。
「関根さんは、小島監督と懇意にされていたようです。ある時、関根さん、そして江尻(亮)さんと僕とで、食事をする機会がありました。セッティングしたのは関根さんだったはずです。小島さんが関根さんに向かって、『選手に嫌われることを嫌がってはいけない』といった話をしていたことを覚えています」
指導者として、自分が目をかけた逸材に対して、嫌われることを恐れていてはその選手を育てることはできない。小島の言葉は、関根の姿勢に重なる。屋鋪は言う。
「10人の若い選手がいたら、10人全員が育つということはあり得ない。だけど、そのなかでも、必ず『コイツだ』という選手はいます。そうであれば、たとえ選手に嫌われてもいいから、厳しい指導をしようとも、それはその選手に対する愛情だと思います。今の世の中は『選手を怒ってはいけない』という風潮ですけど、怒らなければいけないときにはきちんと怒らなければいけない。むしろ、それが本当の愛情なのだと思います」
彼が口にした「本当の愛情」を持つ指導者、それこそ屋鋪にとっては関根だった。現役引退後、屋鋪は大学野球に関わったこともある。そして現在では、少年野球の指導もしている。だからこそ、その口調に熱が帯びる。
「僕は理不尽なことでは絶対に怒らない。だけど、『これは絶対にダメだ』とか、『これは許されないことだ』と思ったら愛情を込めて叱ります。たとえ幼稚園児であっても、怒らなければいけないときには怒る必要がある。今はパワハラに対して世間の目は厳しいけど、きちんとした愛情があれば、親も納得してくれますから」
2 / 4