西山秀二が明かす強打者との対決秘話 「松井秀喜封じの陰に金本知憲のアドバイス」「なぜ落合博満は1球も振らずに三振したのか」 (2ページ目)
── 結果は見逃し三振だった?
西山 金本にとっても想定外のボールだったようで、見逃しはしたのですが......判定はボール。球審に「今のはストライクでしょう!」って食い下がったら、イニングの間に「ごめん」とつぶやかれました(笑)。
【リードで勝たせる捕手の存在意義】
── 配球において、スコアラーやデータ班の資料は使っていましたか?
西山 佐々岡と組んだ時、ヤクルトの土橋勝征によく打たれていて、スコアラーに調べてもらったら、「2ボール1ストライクからスライダーを投げるクセ」があるとわかったんです。
── ヤクルトの「ID野球」はデータ分析が得意でした。
西山 その後の対戦で、2ボール1ストライクからあえてストレートを投げさせたら、土橋は驚いていましたね。データの力は大きい。だから私が中日のバッテリーコーチをしていた時(2022〜23年)、捕手の木下拓哉にカウントごとに球種の偏りがないかをスコアラーと一緒に分析させました。木下は偏りがなく、しっかり考えている捕手でした。
── 西山さんの現役時代、マスク越しに多くの強打者と対峙したと思いますが、なかでも落合博満さんは球史に残る打者でした。その落合さんですが、豪快なホームランを放つ一方で、あっけなく見逃し三振をすることもありました。落合さんという打者は、狙った球種を待ち続けるタイプだったのですか。
西山 というより、コントロールに不安がある若手投手の球は打ちにいかなかったですね。どこに来るかわからないですし、ケガのリスクがあるから無理に打ちにいくことをしなかった。その代わり、コントロールのいいピッチャー、特にエース級の投手には強かったです。
── 大野豊さんとの対決は、落合さんも真剣でした。
西山 大野さんと落合さんは年齢も近いですし、互いをリスペクトしていました。特に大野さんはコントロールが抜群で死球の心配がないから、本気の勝負ができた。私も捕手として、「ふたりの勝負に入り込めない」と感じました。
落合さんは、初球はあまり振らなかったので、まずスライダーでカウントを稼ぎ、最後はギリギリのコースで勝負。それでも落合さんはしっかり打ち返してくるんです。落合さんが打てば一塁ベースで、大野さんが抑えればマウンドで、それぞれドヤ顔をしていましたね(笑)。
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