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藤田平が語った江川卓 「あの時代からすでにメジャー流の投げ方をしていた。まさに異次元の投手」 (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin

 何度も言われていたように、江川は今までのパワーピッチャーと違う投げ方で、打者をねじ伏せていた。あの投げ方だから、あの球質が生まれたのかどうかはわからない。ただ当時は、あの投げ方からあれだけのボールが生まれること自体が奇跡に近い感じとしてバッターたちは見ていたのかもしれない。

「今はセットから投げるピッチャーばかり。なんか迫力がないというか、コントロールを整えるためと、クセを見破られないようにするため、セットポジションで投げていると思う。昔のピッチャーの話ばかりで申し訳ないけど、かつては振りかぶって投げるのが主流で、そのほうが体重を乗せていけるし、速い球を投げられた。

 今のピッチャーは、メジャーに行った山本由伸もそうだけど、上体で投げている感じがする。あれだと、やっぱり腕力がいるんですよね。アメリカ仕込みで上半身を徹底的に鍛えて、上半身で投げる。昔は極端に言ったら、下半身で放る感じだった。日本人はやっぱり下半身に力を溜める体型であり、走り込んで強くして、その力を腕に伝えていた感じですよね」

【もっと長くやってほしかった】

 そもそも日本人と欧米人は骨格が違うため、パワーにおいて格段の差が出てしまう。その一方で、肩のスタミナにおいては人種の違いは関係ないと言われている。

 近年は分業制が確立し、先発投手は100球をメドに交代することがほとんどだ。江川の晩年も6、7回に打ち込まれることが多く、当時は"100球肩"と揶揄されていた。

「肩のスタミナって、投げ込まないとつかないと思っている。僕が入団した時の監督だった杉下茂さんに、中日のキャンプに行った時にお会いして聞いたことがあるんです。『今のピッチャーはなんで投げ込まないんですか』と。すると『体力がないことと、球数を多く放るとコントロールが乱れてくるから、精神的にも嫌になってやめてしまう』と杉下さんは言うんです。『なるほどな』と思って聞いていました。自分の思いどおりにコントロールできず、面白くないから投げ込みをやめてしまうというわけなんです。投げ込みって大事なんだと、あらためて思い知らされましたね」

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