権藤博は大魔神・佐々木主浩につなぐまでの「中継ぎローテーション」を確立し、横浜を38年ぶり日本一へと導いた (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

「あれはローテーションがあるように言われただけで、もう選手には言ってるわけですよ。どこのチームも大体、抑えたピッチャーがすぐ次の日もいくんですけど、私はそうじゃない。『今日抑えたら、明日もいく』って選手が言ってたら、『おまえはね、2日も続けて抑えれるほど、すごいピッチャーじゃない』って。だから『おまえが抑えたら、今度はこっちがいくんだ』と」

 システムとして「中継ぎのローテーション」をつくったわけではなかった。連投させない、ということは結果的に故障防止につながったのかもしれないが、権藤の口ぶりから、その意図は伝わってこない。

「私の考えは、2日も3日も続けていくのは抑えであって、中継ぎはね、ひとりが1日抑えたら次の日は別のピッチャーだったんです。そうすると、『何でオレじゃない?』みたいな顔をする選手もいるわけですよ。そしたら『2日も続けて抑えられるんだったら、大魔神だ。それだったら、おまえが最後をやってるんだ』って言うんです。

 そのかわり、やられたらこう言うんですよ。『おまえは2日も続けてやられるほどヘボじゃない』って言って、やられたらすぐ次の日にいかすんです。『おまえはそんなヤワなピッチャーじゃない。いけ!』って。で、抑えるでしょ? 明日もオレだな、と思ってるところに、『そこまで力のあるピッチャーじゃない』って言うわけ。そうやって中継ぎができあったんです」

【監督が一番ラクだった】

 抑えたときには連投させず、打たれて失敗したときには連投させる。ローテーションというシステムではなかったことが、よりはっきりと語られた。たしかに、失敗を取り返すためにもすぐ投げたいという投手は少なくなく、すぐ起用する監督も珍しくはない。だが、やはり投手とすれば、抑えたときほどすぐ投げたいものなのではないか。

「それはそうですよ。でも、私はいかせない。だから実際、別のピッチャーがいったら『えっ? オレじゃないのか。あいつがいくのか。あいつがいくなら今度はオレだぞ』って思っていたはずなんですよ。五十嵐にしても、島田にしてもね。そうこうするうちにチームが先頭を走り始めましたから、『あいつが抑えたら今度はオレが抑える』っていう思いでみんなやったでしょうね」

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