阪神の連覇は望み薄? セ・リーグ優勝争いの行方を伊勢孝夫が読み解く (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 一方の阪神も打線が軒並み低迷していて、岡田彰布監督も打順を組み替えるなど策を施してきたが、これといった成果をあげられなかった。ただ、ここにきて去年優勝した打順に戻し、バッターたちも落ち着いてきたようだ。とはいえ、投手陣に昨年ほどの安定感がない。とくにリリーフ陣は、うしろにいくほど不安がある。

 要するにどのチームも一長一短があり、決め手に欠けるのだ。

【監督の采配から占う今後】

 となれば、優勝を占ううえでカギとなるのは何か? 長年、コーチを務めさせてもらった者として挙げたいのが、ベンチの空気、勢いである。

 まず広島・新井貴浩監督は、いくら試合に敗れても、選手がミスをしてもマスコミに批判的なコメントはしない。それどころか、先発投手が交代する時、決まってそばに行き、ねぎらいの言葉をかけている。

 就任1年目の昨年からやっていることだが、今季もまったくブレていない。もちろん、チームの状態がいいから文句が出ないといえばそこまでだが、そうした姿勢がベンチに明るさをもたらしていることは間違いない。選手も萎縮しないし、それが結果的に「ここぞ」という場面での集中力につながっているように思えてならない。

 巨人は1年目の阿部慎之助が、自分の色を出そうして、それが選手起用に影響を与えているように映る。たとえば、秋広優人や吉川尚輝がそうだ。

 秋広は昨年、原辰徳前監督が一本立ちさせようと積極的に使っていた選手だ。ところが、阿部監督になった途端に使われなくなった。理由は、結果を出せていないとのことだが、阿部監督は「原カラー」ではなく、自分の気に入った選手を使いたいのだろうと感じてしまう。

 秋広とは対照的に、吉川は原監督時代にケガもあったが、なかなかレギュラーをつかめなかった。それが今年はセカンドのポジションをつかみ、前半戦は3割近い打率を残すなど貢献した。

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