アニマル・レスリーに殴られ続けた男・藤田浩雅が語る「阪急時代の偉大な選手たち」「オリックスへの身売り」 (3ページ目)
── 佐藤さん、山沖さんはどういう投球でしたか?
藤田 佐藤さんは通称"ヨシボール"(縦に割れるカーブ)が武器で、とにかくスタミナがあって、200球くらいなら平気で投げられる投手でした。95年に41歳でノーヒット・ノーランを達成したのもうなずけます。当時私は佐藤さんの近所に住んでいて、登板日は必ず飲んで帰るので、私が運転手でしたね(笑)。でも、車中で野球を教わりました。山沖さんは191センチの長身から投げ下ろすストレート、フォーク、スライダーが持ち味の投手でした。
── 藤田さんで思い出すのが、ストッパーのアニマル・レスリーです。勝利後、握手代わりに藤田さんのマスクをグラブでパンチするのがお馴染みでした。
藤田 なぜか外国人選手に好かれるんですよね(笑)。左腕のガイ・ホフマンともバッテリーを組みました。ブーマー・ウェルズに誘われて食事をしていると、そこに大洋(現・DeNA)や阪神で活躍したジム・パチョレックが合流したこともありました。とくに英語を話せる訳でもないのに、なぜ呼ばれたのか......ひとりで飲んで、食べていました。
── ほかにバッテリーを組んだ代表的な投手に、星野伸之さんがいます。
藤田 星野はリードしていて、一番楽しかったです。ストレートは130キロ程度で、90キロのスローカーブと、110キロ台のフォーク。一つひとつのボールは決してすごいわけじゃないのですが、コントロールと緩急差で2ケタ勝利11回、通算176勝です。星野は、当時巨人の江川卓さんより奪三振率が高かった。いかに打者の読みを外して三振を取るか、勝たせるかは捕手冥利に尽きます。あの清原和博(当時、西武)が内角のストレートを見逃し三振なんて、最高に気持ちよかったですね。
【オリックスへの身売りは寝耳に水】
── 捕手として、思い出深い打者との対決は誰ですか。
藤田 落合博満さん(当時ロッテ)は2ストライクと追い込んでもファウルで粘って、その投手のウイニングショットを待っているような印象を受けました。とにかく選球眼がよかったです。際どいところをストライクと判定されると、「今の球はギリギリのストライク? まだ余裕があってのストライク?」と、よく球審に確認していましたね。
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