プロ6年目のブレイク 日本ハム・田宮裕涼は打てて、守れて、走れる「新スタイルの捕手像」を確立できるか (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 そして尾島監督は、田宮の身体能力だけではなく、人間性も高く評価する。

「バッティングだって、ベースランニングだって、あれだけ能力がありながら、田宮は『オレが、オレが......』というタイプじゃない。黒子(くろこ)にもなれるヤツなんです。それが今も、起用してもらっている要因のひとつじゃないかと思うんです」

【新しいスタイルの捕手像】

 以前、プロ野球で200勝以上挙げている投手から、こんな話を聞いたことがある。

「投手にとっていい捕手とは?」と質問すると、「いろんな意味で、気分よく投げさせてくれる捕手」と即答した。そのことを尾島監督に告げると、こんな答えが返ってきた。

「当時から、田宮はピッチャーのその日のベストボールを探り当てて、その投手の能力を最大限に引き出そうと気を配っていました。配球にしても、『これを投げてこい!』じゃなくて、『次はこのボールでどうかな?』みたいな感じで、あくまで投手優先のリード。『ナイスピッチング!』って、投手がみんなから讃えられているのを、遠くからニコニコしながら眺めている。そんなヤツでした」

 田宮は、昨年までの5年間で31試合の一軍出場しかなかったから、かなり疲れもあるはずだ。それでもしっかり食らいつき、チームの勝利に貢献している。

「今の調子で、1年間ケガなくいってくれたらいいんですが......いつも元気でチームにいる。キャッチャーがチームの信頼を得るには、それが最良だと思うんですよ」

 昨年秋のドラフトで、日本ハムが2位で指名したのは、アマチュアナンバーワン捕手と評されていた上武大の進藤勇也だった。その瞬間、尾島監督は「田宮、危うし!」と不安を抱いたという。

「それでも今年は一軍の試合に使ってもらって、チームの勝利にも貢献している。私たちの知らないうちに、アイツがそれだけの実力者になったということ。きっと、私たちがわからないところで、必死に頑張ったんだと思うんですよ」

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