5年ぶり日本球界復帰で劇的弾! 筒香嘉智は「完全復活」と言えるのか? 名コーチ・伊勢孝夫の答えは? (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

【課題はインコースへの対応力】

 日本復帰戦となったヤクルトとのカード。私は捕手の中村悠平がどんな攻め方をしてくるのか注目していた。結果は予想どおりだった。まずアウトコースから入り、高めも意識させてコースを絞らせず、最後はインコースを攻める。概ね、そうした配球だった。

 ホームランになったボールは、真ん中からやや外のベルトラインにいったもので、いわば失投だった。

 つづく阪神戦でも、捕手の坂本誠志郎は青柳晃洋のシンカーを効果的に使ってアウトコースを印象づけ、最後はインコースで勝負。結果、窮屈そうに腕をたたんでスイングした打球は内野フライか外野フライとなった。

 そんな筒香のバッティングを見ていて、気になることがあった。それはストライクゾーンについてだ。アメリカでは、インコースの球はあまりストライクを取らない。そのため自然と真ん中から外主体の配球になり、打者の目付けもアウトコースになる。

 ヤクルト戦では、インコースの球をボールかなと反応してバットを止めたシーンがあったが、結果はストライクと判定され、見逃し三振になった。要するに、インコースの球をボールと判断してしまっているわけだ。まだ筒香の感覚として、アメリカのストライクゾーンが残っているのかもしれない。そのあたりのストライクゾーンへの対応も、今後の課題となりそうだ。

 日本球界に復帰してから、ヒットになっているほとんどは真ん中から外寄りのボールだ。5月11日の阪神戦では、8回に岩崎優から決勝ホームランを放ったが、打った球は真ん中に入ってくるスライダー。岩崎にしては珍しいコントロールミスだった。あの一打については、追い上げムードのなかスタンドの空気が打たせてくれた一発という気もした。

 どのチームも先乗りスコアラーを派遣しているだろうから、ヤクルト、阪神の試合を見て、「インコースの強くて速い球は、まだ対応しきれていない」というデータが出ているはずだ。なまじ真ん中から外の球はホームランしているだけに、今後はよりインコースを厳しく攻めてくるだろう。

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