WBC決勝、マウンドへ向かう大谷翔平の背中を見送った厚沢和幸「これで僕の仕事は終わった」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 編集協力●市川光治(光スタジオ)

 僕のほうでも、普段は先発をやっているピッチャーがリリーフに回る時、どういう仕草でどういう準備をするのかを見ていて、それぞれのピッチャーがマウンドへ上がるまでにどのくらいの時間が必要なのかを瞬時に見極めています。

 今永の場合は身体の準備だけでなく心の準備も必要なタイプなので、マウンドでいいパフォーマンスを発揮するために必要な時間を割り出して、いま投げているピッチャーの球数や調子、打順の巡りを見ながら、このタイミングで準備を始めてほしいと指示していました。

 決勝での翔平の登板は、栗山(英樹)監督から前日に聞きました。僕はいつも僕なりの素のリアクションをするので、監督は僕に話して反応を見たいんじゃないですかね。あの時は僕、けっこう冷静に「わかりました」と言ったと思います。

 ダルと翔平に関してはこちらが勝手に使うのは難しいところがあって、そこは栗山監督と本人、それぞれの球団とのやり取りがあってのことだったと思います。だから僕は翔平を決勝で行かせると聞いた時、ゴーサインが出たんだなと解釈しました。

 決勝でいくことに関しては、彼らはいきたいだろうし、僕もいってほしいと思っていましたし、そんなに驚きはありませんでした。

 栗山監督のなかに、最後、ガッツポーズをするイメージがあるピッチャーがいる、という話は聞きました。もちろん翔平が浮かびましたけど、ダルだってその可能性はある。だから僕はダルか翔平か、どっちかなと......でもダルは以前(2009年のWBCで)、胴上げ投手を経験していますから、監督の頭にあるのは翔平なのかなと思っていました。

 決勝の日、あれは6回だったかな。翔平がブルペンに来た時の顔を見て、これは誰も入れないなと感じました。とくに目つきが違ったんです。翔平には「任せておいて大丈夫だね」と言いました。そうしたら翔平が「打席との兼ね合いがあるので、こっちでやれる時にやります」と言うので、これは放っておいたほうがいいと判断しました。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る