WBC決勝、マウンドへ向かう大谷翔平の背中を見送った厚沢和幸「これで僕の仕事は終わった」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 編集協力●市川光治(光スタジオ)

 僕は、いつもはオリックスのコーチをしていますから、人見知りが激しい宇田川(優希)のことが気になって「よろしくね」と言ったら、ダルは「わかりました」と言って、あっという間に宇田川を輪の中に引き込んでくれました。投手会を"宇田川会"なんて名づけて、世に広げてくれたでしょう。バリバリのメジャーリーガーにできる作業ではないなと驚きました。

 野球でのアプローチはもちろん、チームの雰囲気づくりのアプローチも心得ているんだなと思ったんです。ファイターズからアメリカへ渡って10年、その年月の経験が彼を変えてくれたのかなと僕は思っています。ダルのおかげで宇田川は調子というレールにポンと乗せてもらって、そのまま勢いよく走っていっちゃいましたけどね(笑)。宇田川会のあとは全国に顔も売れたし、アイツの独り舞台でしたよ。

 ブルペンでのダルは、とにかくいろんなことを細かく僕に聞いてきてくれるんです。何回からキャッチボールをしたらいいのか、どのタイミングで座っていればいいか。彼のキャリアから考えれば想像もつかない質問をしてくるので、彼はまだいろんなことをいっぱい吸収したいんだなと感心しました。

 ダルのすごいところは、若いピッチャーにあれこれと質問をしていたことです。変化球の投げ方だったり、登板間の調整法だったり、そういうことを若いピッチャーに質問して、その答えを真剣な顔で聞いている。まだまだ成長しようとしているんでしょうね。ブルペンでのつくり方に関してもいろいろ真剣に訊いてくるダルに対して、僕もきちんと答えなきゃと思っていました。

【今永昇太の存在にも助けられた】

 今永(昇太)の存在にもずいぶん助けられましたね。1次ラウンドでダルのあとの第2先発としていい仕事をしてくれて、決勝では短いイニングの先発をして、ベイスターズのエースの時とはずいぶん勝手の違う仕事を強いられたと思います。それでも兄貴分としていつもブルペンでどっしりとしてくれていて、さすがだなと思って見ていました。

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