和田毅、館山昌平が語ったプロ野球選手だからこそできる支援活動「夢をあきらめてほしくない」 (3ページ目)

  • 氏原英明●文 text by Ujihara Hideaki

 館山はケガをしないことへの啓蒙活動を行なっているが、一方でこの日のように経済的な理由などで野球が続けられない子どもたちへの支援も行なっている。少しでも野球ができなくなってしまう選手を減らすという、館山の思いが伝わる。

【野球人口が増えれば環境は変わる】

 この日のイベントは一風変わっていた。今回は支援者への恩返しの場でもあったのだが、そこで取り組まれたのは「アクティビティ」という体を動かす交流だ。

「ライフキネティック」のトレーニングを取り入れたものだが、じつはこれは和田が来季に向けて自主トレでもやる予定だという。ライフキネティックは、脳を活性化させるトレーニングのひとつで、ドイツのブンデスリーガのクラブなど多くのスポーツチームが行なっている。

 とはいっても、決して激しい運動をするようなものではなく、目で見て、頭で判断して動くという楽しいものだ。それをファンとともにやる理由は、支援ありきの取り組みにならないためのものだ。館山は言う。

「(こうした支援の)理想論は、支援がなくても世の中が平和だったら一番いいと思います。サポートはできる限りのことはしていかなきゃいけないですけど、世の中がもっと明るくなって、たとえば野球人口がもう少し増えて、道具に関してももっと値段が下がりやすい状況になったり、公園でキャッチボールができるような環境になればいい。今は公園に18人集めて試合をするのが難しくなってきて、高校野球も僕らの頃は4000校以上あったのに、今は3400校ぐらいまで減っている。サポートできる人が助け合いながら、誰もが自分のやりたいことにまっすぐ向き合える世の中になることが最終目標かなと思います」

 プレーすることをあきらめることがないように。人それぞれがやりたいことができる世の中に。野球を通じてそれを伝えることが、この日の取り組みであり、目指すところであり、我々大人が考えていくべきことなのかもしれない。

プロフィール

  • 氏原英明

    氏原英明 (うじはら・ひであき)

    1977年生まれ。大学を卒業後に地方新聞社勤務を経て2003年に独立。高校野球からプロ野球メジャーリーグまでを取材。取材した選手の成長を追い、日本の育成について考察。著書に『甲子園という病』(新潮新書)『アスリートたちの限界突破』(青志社)がある。音声アプリVoicyのパーソナリティ(https://voicy.jp/channel/2266/657968)をつとめ、パ・リーグ応援マガジン『PLジャーナル限界突パ』(https://www7.targma.jp/genkaitoppa/)を発行している

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