和田毅、館山昌平が語ったプロ野球選手だからこそできる支援活動「夢をあきらめてほしくない」 (2ページ目)

  • 氏原英明●文 text by Ujihara Hideaki

 このプロジェクトでは、用具提供を希望する野球少年を公募。希望者は作文を提出し、選考委員である和田や館山が協議して提供者を決める。

【支援を続けることで気づいたこと】

 プロジェクトは4年目を迎えるが、続けてきたことでたくさんの発見があったと和田は言う。

「道具を渡した時の子どもたちのうれしそうな表情や、毎晩布団に道具を抱えて寝ているという話を聞いた時は、彼らのような気持ちになって自分は(野球を)やってこなかったなと。支援をすることで気づくことは多かったなと思います。我々は用具を提供してもらってプレーしている立場なので、矛盾していることかもしれないですけど」

 家庭環境が厳しかったことでクローズアップされる選手として、現役ではオリックスの宮城大弥が挙げられる。宮城はボロボロのクラブを大切に使いながら、プロの舞台までたどり着いた。そして2023年は侍ジャパンの一員としてWBCを戦い、世界一に輝いた。和田は言う。

「テレビ番組などで、宮城選手のような少年がいるのを見ると、あきらめる選手もいるんだろうなと考えたりしますね」

 毎年のように、冒頭に挙げた理由で野球ができなくなる選手がいる。自ら招くケースもあるが、本当に野球を続けたい選手のためにバックアップするのが大人の役目なのだろう。なかでも、プロは用具提供を受ける選手がほとんどで、だからこそ道具があることへのありがたみを"支援"という形で恩返しするのは素敵な取り組みと言えるだろう。

 また、館山がこのプロジェクトにいることも大きな意味を持つ。なぜなら館山は現役時代、幾度となくケガに見舞われ、野球がしたくてもできなかった経験の持ち主だからだ。現役を引退した今、自身の活動を通して伝えなければいけないことがあると館山は言う。

「ケガで野球をあきらめてしまった先輩や同級生を見ると、もったいないというのが先にくるんですよ。プレーをしていた時は、最後までとことん突き詰めてやりたいという思いと、負けてなるものかというようなあきらめの悪さ。自分の現役時代は"ケガ"というところがクローズアップされてしまっていましたが、そこでケガに勝った、リハビリで乗り越えた......となれば、世の中を明るくできるんじゃないかと、意地になってやっていました。ただ、そこを乗り越えたからじゃなくて、そもそもケガをしない環境をつくらなきゃいけない。それが僕の使命だと思っているので、できる限りのことはサポートしたいなと」

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