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大谷翔平から「オレのピッチングは参考にしないほうがいい」と助言 高橋宏斗は「独特の感性を持っているんだろうなと感じた」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

【2009年WBCはまだ6歳だった】

 20歳でのWBCといえば、2009年の田中将大が思い浮かぶ。20歳でWBCに出場した田中もまた、ドジャー・スタジアムで行なわれた準決勝のアメリカ戦、高橋と同じ3番手として7回の1イニングを投げた。ブライアン・ロバーツ(当時、オリオールズ)とディビッド・ライト(当時、メッツ)から三振を奪って、ゼロに抑えている。

「2009年のWBCの時は僕、まだ6歳かな? でもダルビッシュ(有)さんが最後を締めくくったシーンは覚えています。田中さんが20歳だったというのは知らなかったんですが、そう考えると、同じ歳で自分自身もそこに立ったというのはすごいことをしているのかもしれないなと感じますね。日の丸を背負ったのは初めてですし、本当に自分が世界一の一員だったというのは、正直、出来すぎだと思いますし、今でも信じられません。

 でも、そこに満足したくないという気持ちもあります。1つ上に佐々木朗希さんや宮城大弥さんがすごい成績を残していて、1つだけ上の先輩がこれだけできるんだっていうことを示してくれています。僕も出来すぎだと思っていますが、もっと高いレベルの人たちがいることも感じていますから、まだまだここからだなと思っています」

 歳が近いだけに距離を感じやすい1つ上の佐々木、宮城だけでなく、ピッチャーとして8歳上の大谷翔平、16歳上のダルビッシュのことを高橋はどんなふうに見ていたのだろう。

「宮崎での合宿初日、ブルペンで初めてダルビッシュさんのピッチングを見た時、僕は横から見たんです。ダルビッシュさんがすごい真っすぐを投げている、すごい変化球を投げているというのは後ろから見たらすぐにわかります。でも、ただ単に『すっげえ』って思うだけじゃなくて、どういう身体の使い方をしているのかなというところに興味があったので、横から見てみようと思ったんです。

 感じたのは、1球を投げる時の自分の身体の使い方とか、身体がこう動いていることを理解しながら投げているんだろうなって......僕なら、この球がよかった、この球が悪かった、じゃあ、その2球の身体の使い方がどう違っていたのかというのはまったくわからない。でもダルビッシュさんはその2球の違いの理由を訊いたらきちんと理解していて、『ここにこういう疲れがあるから、こうなっている』と答えを導いてくれて、こんな人、いるんだなとビックリしました。

 大谷(翔平)さんにはどんな意識でピッチングしているのかを訊いたら、『オレのピッチングは参考にしないほうがいい。ただがむしゃらにストライクゾーンへ投げ込んでいるだけだから』と言われました。たしかに、試合前のピッチングを見ていてもあんまりストライクが入っていないんですよね。これでマウンドへ行くんだと思っていたら、あんなすごいピッチングができちゃうんだから信じられません。独特の感性を持っているんだろうなというふうに感じました」

著者プロフィール

  • 石田雄太

    石田雄太 (いしだゆうた)

    1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Number』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。

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