斎藤佑樹が日本シリーズでプロ入り後最速の147キロをマークするも「右腕がまったく上がらない。これはヤバい...」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 9回表は鈴木尚広さんと松本さんに打たれて2点をとられましたが、じつはあの試合の真っすぐ、147キロ(プロで自己最速タイ)が出ていたんです。なぜか突然、ボールが指にかかって、「うわっ、この感覚、いいな」と思って投げられました。久しぶりにこの感じがきたな、うれしい、でも肩が痛い、でもうれしい、いい感覚だからこのまま投げ続けたい......そんな気持ちだったことを覚えています。

 その日、投げ終えてアイシングした時はいい感覚で投げられたこともあって、これはいいハリが出ているんだろうなと思っていました。だから、あの時に痛めたという1球があったわけではありません。右肩はずっと、ちょっと痛かった。でも投げ続けて肩が暖まってくると麻痺してくる感じもあって、投げられたんです。

 投げた日の夜は筋肉痛がくるもので、あの日は2イニングしか投げていないのにまるで完投したあとみたいな感じでした。気持ちいい、というところまではいきませんが、スピードも出たし、投げ終わったらこんな感じのハリだよね、と思っていました。

 ところが次の日の朝、起きたら気持ちのいいハリなんてものじゃなくて、もう、激痛が襲ってきました。右腕がまったく上がらないんです。歯を磨く時も痛くて、コップを持ち上げようとしたらズキンと痛む、シャンプーもできない......これはヤバいと思いました。

 シャドーピッチングしようとしたら腕を振るどころじゃない。やっちゃったかもしれないとドキドキしながら、でも自分のなかでは147キロを投げられたのは久しぶりだったから仕方ない、指にいい感じでかかった時は肩にも負担がかかるよな、そのうち回復するよ、と思いたい気持ちもありました。すぐにトレーナーに報告して、まずは様子を見ようということになりました。

【診断結果は右肩の関節唇損傷】

 それでも右肩の痛みはなかなか回復しません。沖縄での秋季キャンプが行なわれた11月になっても痛みは回復せず、これはいくらなんでも回復が遅すぎると思い始めました。11月半ばには翌春にWBCを控えていた日本代表とキューバとの試合が組まれ、僕もメンバーに入っていました。それも辞退せざるを得ません。

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