人的補償、現役ドラフトで移籍もわずか1年で戦力外 当事者たちが語った本音「育成契約はあるかなと...」「もうちょっとチャンスはほしかった」 (2ページ目)

  • 杉田純●文 text by Sugita Jun

 それでも4月12日のロッテ戦で移籍後初登板を果たすと、最速149キロをマークするなど1回を無失点。同23日には京セラドームでのオリックス戦にも登板し、中川圭太、森、杉本裕太郎のクリーンアップを三者凡退に抑える好投を見せた。

 だがその後は2試合続けて失点し、5月3日に登録抹消される。結局、今季は5試合の登板に終わり、10月に非情な宣告が下された。

「本当に肩をずっと故障したままで......悔いばかりでした」

 西武での1年はどんな時間だったかを問うと、言葉を選びながらそう答えた。約半年、実戦から離れ、ブルペン投球を再開したのもシーズン終盤だった。トライアウトでの登板後に、口をついて出たのが無事に投げられた喜びだったことも頷ける。

 ただケガという事情があったとはいえ、移籍1年目での戦力外通告というのは、少し早すぎるようにも思う。正直、もっとチャンスがほしかったか? それとも仕方ないと自分でも思うか? あえてストレートに質問をぶつけると、こんな答えが返ってきた。

「本当は、自分のなかでは『育成(契約)はあるかな......』とは思っていました。それが(実際には)なかったので、『そうですかぁ......』みたいな」

 張は苦笑いを浮かべて、こう続けた。

「この1カ月間ずっと練習して、本当に西武のスタッフさんにも関係者の方にもお世話になって、球場も使わせてくれて......もう感謝の気持ちしかないです」

 古巣への感謝の気持ちを張は強調したが、やはり与えられた時間の少なさは否定しなかった。

【現役ドラフト1期生は6人が戦力外に】

 張とはルートが違えど、移籍1年目にしてトライアウトに参加した選手はまだいる。成田翔もそのひとりだ。成田は昨年"現役ドラフト1期生"として、ロッテからヤクルトに移籍した。

 現役ドラフトは、出場機会に恵まれない選手の活性化を目的として導入されたシステムだ。年俸や契約年数、FA権の有無などに制限を設け、とくに若手やレギュラーをつかめずにいる選手が対象になりやすい。前述したように、大竹や細川はこの現役ドラフトで人生が変わった選手だ。

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