カープ投手陣の深刻な勤続疲労 大阪桐蔭・前田悠伍よりもドラフトで獲得すべきは?

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

チーム事情から見るドラフト戦略2023〜広島編

 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団どのような戦略に出るのか。今回は新井貴浩新監督のもと、5年ぶりAクラス入りを果たした広島のドラフト指名を予想したい。

大学選手権決勝で明治大を完封した青山学院大の常廣羽也斗大学選手権決勝で明治大を完封した青山学院大の常廣羽也斗この記事に関連する写真を見る

【前田悠伍も捨てがたいが...】

 74勝65敗4分(勝率.532)でセ・リーグ2位に入った広島。正直、この戦力でよくぞここまでの戦いができたと思う。

 打線はライアン・マクブルームが昨年より大きく成績を落とし、新外国人のマット・デビッドソンがやや期待外れに終わり、実力と看板を兼ね備えた威圧感十分のクリーンアップが組めなかった。勝負どころの夏場のある試合で「4番・上本崇司」と発表された時は、失礼ながら「大丈夫か......」と思ったものだ。

 投手陣も長く先発マウンドを守ってきたベテランたちに勤続疲労の気配がある。3年目の大道温貴と5年目の島内颯太郎が中継ぎで奮闘したが、絶対的ストッパーの栗林良吏に疲れが見えたのは、入団してから2年連続30セーブ以上、さらには日本代表としてWBCを戦ったことも考えれば当然のことだろう。そんなチームの危機を救ったのが、54試合に登板し4勝2敗24セーブを挙げた矢崎拓也だ。

 ただ全体的に見ると、やはり投手力に不安が残る。広島は、2021年のドラフトで黒原拓未(1位/関西学院大)、森翔平(2位/三菱重工West)、松本竜也(5位/ホンダ鈴鹿)、2022年には益田武尚(3位/東京ガス)、河野佳(5位/大阪ガス)、長谷部銀次(6位/トヨタ自動車)の合計6人の大学・社会人の投手を指名した。おそらく即戦力を見込んで獲得したはずだが、このなかでなんとか今季の戦力になったのは4勝2敗の森だけだったことは、なんとも痛かった。

 少なくともこのなかの半数ぐらいに来季のメドが立っていれば、1位は前田悠伍(大阪桐蔭/180センチ・77キロ/左投左打)の一本釣りという展開もあったかもしれない。

 前田は身分的には高校生でも、野球センス、投球センスにかけては、すでに立派なプロ級の左腕だ。春から登板機会が少なく、いろいろ心配もされたが、台湾で開催されたU−18W杯での投げっぷりを見れば大丈夫だろう。

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る