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NHKディレクターからBCリーグ監督へ 異色の転身を遂げた伊藤悠一が振り返った「前代未聞の1年」 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • 写真●茨城アストロプラネッツ提供

 顕著な例が、今季の監督人事だろう。ほとんどの独立リーグ球団が元NPB選手を指揮官に迎えている一方、茨城は知名度のある人物にこだわるのではなく、海外経験を持つ松坂前監督のように、たとえ無名でも専門性の高い指導者を招いている。そうした土壌に惹かれ、キャリアアップしたい選手たちが集まるようになった。

 球団は選手たちを伸ばすべく、フィジカル面の強化や成長マインドセットの構築を重視する。茨城にやって来る選手たちはそうした独自色をわかっているから、指導経験のない伊藤監督を受け入れることができたのかもしれない。

 逆に伊藤監督自身は、TVディレクターとして10年以上務めたキャリアを生かせると思ったからこそ、アストロプラネッツの監督募集に応募した。人の話を聞き出し、周囲の人たちが持ち味を発揮できるように配置していくマネジメント力は、どちらの仕事でも発揮できるはずだ。球団の色川冬馬GMもそう期待し、前代未聞の挑戦を一緒に始めることにした。

【選手に関わる者たちの人材育成力】

 3月の春季キャンプから9月のシーズン閉幕まで、伊藤監督がとくに力を注いだのは選手たちの本心を掘り起こすことだった。たとえば守備で捕球エラーが起きた場合、"技術屋"であるコーチは真っ先にグローブの使い方やステップなどテクニカルな部分に目がいくものだ。技術的な問題ならそれで解決できるかもしれないが、マインドのあり方がミスにつながっているケースもある。伊藤監督は後者の役割を担った。

「コーチと私では、見方を変えられる存在でありたいと思いました。去年から在籍している選手に加え、今年新しく加入した選手も『これまでの野球指導者とは違う』と言ってくれたので、新しい指導スタイルに触れてもらえたと思います」

 PDCAやコーチング、1on1ミーティングという人材開発の手法はビジネスの世界で広まり、野球界でも重要性が認識されつつある。伊藤監督が担ったのは、まさに思考整理やコミュニケーションの部分だった。

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