今季ブレイクの阪神・村上頌樹 なぜプロ入り前にスカウトから過小評価されていたのか

  • 安部昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 スポーツ新聞を開くと、野球記事のページに必ずあるのが両リーグの「打撃成績」と「投手成績」である。今年は新戦力の台頭もあり、常連ばかりが名を連ねる"ベスト10"ではない。

 打者なら、細川成也(中日)、関根大気(DeNA)、頓宮裕真(オリックス)らがそうだ。そして投手を見渡すと、つい先日までセ・リーグ2位の防御率を誇っていた村上頌樹(阪神)に目が向く。

 そんな村上について、もっとも注目すべきが「四球6」という数字である。村上はここまで67イニングを投げおり、与四球率はなんと0.81。プロ3年目でこのコントロールのよさは驚きに値する。まさに「令和の精密機械」である。

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【3段階のコントロール】

 投手のすごさを"球速"で表現するようになったのは、スピードガンが登場した1970年代終わりの頃だ。能力の一端が数値化されるようになり、とりあえず投手のすごさを表現する手っ取り早い手段として、「最速○○キロ」というフレーズが幅をきかすようになった。

 その一方で、"コントロール"の値打ちが論じられなくなり、アマチュアの投手を評価する際、コントロールよりもスピードを重視する傾向が強く、今もそこは変わっていない。

 そんななか、村上をはじめ、大竹耕太郎(阪神)、東克樹(DeNA)のコントロール技術は、野球界に新たな流れをつくりつつある。

 5月30日にベルーナドームで行なわれた西武と阪神のセ・パ交流戦。この試合に先発した村上のピッチングは、見事だった。

 まず村上の投手としての資質を感じるのが、初球の入りの用心深さだ。そのピッチングからは、何がなんでも長打だけは許さないという意図が見えた。ファウルを打たせるために手元で小さく変化するカットボールに、低めに這うように伸びてくるストレート。そして勝負球を自在に操るコントロール。

 コントロールは、投手のレベルによって3段階ある。まずストライクゾーンに投げられるコントロール。これが"入口"だろう。次に、捕手が構えたミットに決められるコントロール。そして最もハイレベルなのが、ボールゾーンを使えるコントロールだ。村上はこれらすべてを備えており、なかでも特筆すべきは、ボールゾーンを使えるコントロールのよさだ。

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