なぜ楽天・内星龍は山本由伸の「完コピ」投球フォームになったのか 契機は「野球ってしんどいなぁ...」の絶望感だった (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Sankei Visual

「中学の時からやっていて楽しかったし、『やりたいな』ってずっと思っていて。現実に目を向けた時に厳しいっていうのは監督や両親からも言われましたけど、『それでもやりたい』って申し出ました」

 高校からピッチャーに挑戦することは珍しいことではない。それよりも疑問があった。「なぜ、自分より10センチ以上も身長が低い山本を参考とするようになったのか?」ということだ。

 本来ならば内と身長が近いダルビッシュ有や大谷翔平を目指すはずだし、実際にスタート地点はそうだった。肩甲骨や股関節の柔軟性を養うためのアプローチや、パフォーマンス向上を促す初動負荷トレーニングを行なっていたが、大きな成果をあげられなかった。それどころか、2年生の2019年に肩を故障してしまった。

【山本由伸を参考にした理由】

 好きで始めたピッチャーで挫折する。

「あぁ......野球ってしんどいなぁ」

 絶望しかけた時期に出会った存在こそ、若手の有望株として台頭してきた山本だったのだ。

 動画サイトに試合前練習で遠投する山本の映像があった。そのボールの軌道に、内は釘づけになった。

「投げ方っていうより球質にびっくりして。『軽く投げてあんなすごいの?』って。それから由伸さんのことをいろいろ調べまくって、トレーニングの動画とかを参考にしながら、見よう見まねでやってましたね」

 その過程でたどり着いたのが、山本が師事するトレーナーが運営する接骨院だった。そこで内は、正しい体の使い方を学んだ。

 技術的な指導は一切ない。重要だと説かれたのは、正しい姿勢と出力を高めるための呼吸だった。そこから体の仕組みを知り、「今の自分に合っている動作とは?」を探り、試行錯誤を繰り返していった。

「ピッチャーを始めた頃っていうのは、ただ単にトレーニングをしていただけだった。だから、ケガをしちゃって投げられなくなって。ウエイトにしても『筋肉をつけすぎるのはよくない』って、勝手なイメージだけで否定するんじゃなくて、自分の体を理解したうえで取り入れるのなら突き詰めるべきだと思います。接骨院で教わるようになってから、そういう考え方ができるようになりましたね」

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