巨人・門脇誠は高校1年夏から7年間フルイニング出場の鉄人 使えば結果を残す安定感でレギュラー奪取を狙う
昨年の夏の終わり頃だったと思う。門脇誠(現・巨人)の取材で東京・八王子にある創価大学野球部・ワールドグラウンドを訪れた。
部の都合で、グラウンドに部員ひしめく全体練習日ではなく、取材をお願いしていた門脇と篠田大聖(現・BCリーグ新潟アルビックス)の練習を手伝っていた何人かの選手とスタッフだけ。いつもの気合いのこもった爆音響くグラウンドとは対照的な雰囲気だったが、それはそれで新鮮だったのを覚えている。
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【遠投120メートル級の強肩】
このふたりの4年生が「プロ野球を熱望している」ということは、すでに佐藤康弘コーチ(現・監督)から聞いていたから、こちらの向き合い方も「ドラフトに挑む本気すぎる心境吐露」......その一点に絞られていた。
その前に、まず"実技"を間近で見て驚いた。
アップもそこそこに、ショートの守備位置について、同僚選手が放つ打球をさばいていく。大きなストライドで動き出しても、捕球点に近づくと細かなステップに切り替えてバウンドを合わせる。内野手としての所作ができている選手だと思った。
捕球も、バウンドの頂点かショートバウンドのタイミング。一塁への送球は、"華麗"というより力強いスナップスローで投手が投げたボールのような捕球音を轟かせる。
三遊間の深い位置からも、当たり前のようにダイレクトで一塁に投げられる鉄砲肩。なのに、強肩を見せつけるように強く投げすぎないのがいい。強く投げたがる内野手は、大きく上にふかすか、指先に引っかけてライト方向に逸れてしまう。
門脇の送球は、いつも一塁手の肩よりも低い。ただボールにシュート回転がかかり、三遊間の深い位置からのロングスローになるほど、その傾向は増す。背筋の強い選手のロングスローは、外野手もそうだが、シュート回転気味になるという話を聞いたことがある。とはいえ地肩そのものは"120メートル級"の猛肩だから、「併殺のとれる二塁手」としても重宝されるはずだ。
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著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。