「そのシュート、いいね」松坂大輔の言葉に「いける」 育成5位→新人王の西武・水上由伸が大下剋上を果たせたわけ (2ページ目)
●反骨心と感謝を持ってプロ入り
「僕は基本、野球ができたらいいというタイプですけど、野球を始めた時からカッコいいという理由でピッチャーになりました。だから、投手としてプロにいくことも意識はしていました」
水上は投手復帰直後から有言実行だった。秋季リーグ開幕戦の愛媛大戦から剛球を連発する。最速149キロを記録し、4勝1敗・防御率0.69で四国学院大のリーグ優勝の立役者になった。自身も最多勝・最優秀防御率・ベストナインの投手3冠を獲得した。
4年秋の最終シーズンは、「プロ野球選手、コーチ、スカウトとして活躍されていた方だったので、プロへのイメージがつかみやすかった」と水上が振り返る、中尾明生監督(当時)のサポートもあって、目標だった150キロに到達した。
この記事に関連する写真を見る
この記事に関連する写真を見る 高橋トレーナーは「4年春にリーグ戦がコロナ禍で中止になった時、トレーニングで体を追い込めたことが大きかった」と水上の成長の背景を語る。
ただ、4年秋のシーズンの結果は芳しくなかった。ドラフトまで1カ月を切った愛媛大戦では先発完投勝利も7失点。
「これ、スカウトが見てなくて本当によかったなあ」
試合後、筆者と水上が顔を見合わせお互いに苦笑いを浮かべたことは、今だから言える話である。
それでも水上はドラフト指名に自信を持っていた。
「マウンドからでも智男さんが見てくれていたのはわかっていたので、指名自体は大丈夫だと思っていました」
「智男さん」とはライオンズの渡辺智男スカウト。自身、伊野商(高知)のエースとして甲子園優勝を経験し、プロ野球引退後は、ライオンズで四国地区の担当スカウトを担っている。
そして迎えた2020年10月26日。ライオンズは水上を育成5位で指名した。
「春先はストレートがばらける場面もあったが、秋はストレートの出し入れもできるようになっていた。変化球の課題をクリアすればすぐに支配下登録できると思って指名しました」と渡辺スカウトは語った。
「見てくれている人は見てくれていたんだ」
あらためて沸き上がるライオンズへの感謝の思い。それとともに、水上のハートには新たな炎も灯った。
「僕をとれなかったことを後悔させてやりたい。その反骨心と、智男さんのスカウトとしての株を上げたいという気持ちを強く持ってプロに入ったんです」
ちなみに、4年秋の「7失点完投劇」についてはこんな後日談もあったそうだ。
「情報は智男さんのところにも入っていて......。あとで言われました。『打たれ過ぎやろ』って(笑)」
2020年育成ドラフト5位で指名された水上。ライオンズの渡辺智男スカウト(左)と四国学院大の中尾明生監督(当時、右)と記念撮影 photo by Terashita Tomonoriこの記事に関連する写真を見る
2 / 3