山﨑颯一郎は侍ジャパンに貢献できるか 不思議な空気感をつくる天然キャラと恩師も認める未知の可能性 (2ページ目)

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Kyodo News

 高校3年夏の県大会では、初戦で実力校の坂井高校と対戦。2−2のまま延長戦に突入し、エースの山﨑は延長15回をひとりで投げ抜くも、勝ち越し打を許して2対4の惜敗。

 試合後、泣きじゃくり、コメントすらできないチームメイトがいるなかで、山﨑は毅然とした態度で記者たちの質問に答えていた。

 その後、ドラフトでオリックスから6位指名を受ける。東監督は、山﨑のポテンシャルに期待を抱きつつも、「通用すればすごいピッチャーになる可能性はありますが、ゼロのまま終わってしまう可能性もある」と語っていた。

【チーム屈指の人気選手に】

 プロに入って4年間は一軍登板がなく、大手術も経験。一時は育成契約を味わったが、その表舞台に立てなかった間に体を鍛え抜き、球団所属の日本人投手で最速となる160キロをマークするまで成長を遂げた。

 今春のキャンプでは、山﨑が姿を現すだけで女性ファンから黄色い声援が飛び、球場の外に出るとたちまち人だかりができた。

 オリックスのファンフェスタでの仮装によってつけられたニックネームは"吹田の主婦"。それになぞらえ、女性ファンから「今日の夜ごはんは何ですか?」と声をかけられると、「肉系かな」と真顔で答える姿は、いかにも山﨑らしい。

 プロの世界に身を置いてから丸6年が経っても、球団関係者は「今も天然ですよ」と明かすが、山﨑の発する言葉に力強さが増したように思う。

 春季キャンプ後半のある日、ここまでの成果について尋ねると、軽やかな口調でこう返ってきた。

「順調にきています。今は決め球を磨いているところなんです。投げながら、『これが決め球だったらいいな』という感じで、探りながら形にしているんです。実戦で試して打者の反応を見ながら、どう完成形にしていくか。種類で言うと、カーブとフォーク系。いい感じで仕上がってきていると思います。でも、真っすぐに関してはまだまだですね。精度と威力をもっと上げていく必要があります」

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