高木豊が「バットコントロールがうまい歴代の選手」を厳選。ブレイク前のイチローのすごさに思わず「なんで試合に出てないの?」と質問した (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • Photo by Sankei Visual

――突然バットが出てくる感じですか?

高木 そうですね。前田智徳(元広島)にもそういう感じはありました。

 彼はボールを待つ形も、バットコントロールもいいですが、特筆すべきはミスショットが少ないこと。あれだけ少なければ打率も残りますよ。狙ったボールをしっかり待てるバッターで、「絶対この球を振る」と決めたら待ち続けていました。例えば、佐々木主浩(元横浜など)と対戦する際にはフォークを待っていることも多かったですし、相手ピッチャーの決め球を打ち返せるバッターでしたね。

 あと、鈴木尚典(元横浜/現DeNA一軍打撃コーチ)のバットコントロールもすごかったです。インサイドいっぱいのボールを、センターに打ち返しますからね。バットを内側から出しながらセンターに打ち返せるバッターはそういません。肘の柔らかさが抜群で、抜かれた緩いボールにも、速いボールにも対応していました。

――バットコントロールというテーマで聞かざるを得ないのが、イチローさん(元マリナーズほか/現シアトル・マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)です。高木さんは日本ハム時代(1994年)に対戦したこともあると思いますが、どう見ていましたか?

高木 1994年は、イチローが史上初の200本安打を達成した年でもありますね。それはもう、バットコントロールは天才中の天才ですよ。どんな球でもバットに当てられた印象です。

 あと、体全体でボールを捉えにいくタイプですね。(現役選手編でも話したように)村上宗隆(ヤクルト)や吉田正尚(ボストン・レッドソックス)らは形を作ってボールを待つタイプで、スイング時は「静から動」という動きをする。一方でイチローは「動から動」で、動きながらボールを捉えるんです。

――以前、イチローさんの打球分布図を見た時があるのですが、90度のフェアゾーンに満遍なくヒットを打っていました。

高木 僕が日本ハム時代のあるオリックス戦で、試合前のミーティングでイチローが打席に入った時の守備位置について話をしたことがあって。「三遊間に打たれたら、足が速いからほとんど内野安打になる。だから、遊撃手を二塁ベースの後方に守らせてセンター方向の打球をアウトにしたほうがいいんじゃないか」と話していたんです。

 そうしたら、イチローは三遊間にばっかり打つんですよ(笑)。それで三遊間を少し締めたら、今度はセンター方向に打ってきた。「そこまで狙って打てるんだな」と驚きました。

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