史上最強へのラストピースは「88年世代」。ダルビッシュ有、大谷翔平が参戦の侍ジャパンに田中将大、坂本勇人が必要なわけ (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

これまで長きにわたり侍ジャパンの遊撃手を務めてきた坂本勇人これまで長きにわたり侍ジャパンの遊撃手を務めてきた坂本勇人この記事に関連する写真を見る「菊池(涼介)、(坂本)勇人、柳田(悠岐)、菅野(智之)もそうだし、マー君(田中将大)もそうかもしれない。ジャパンの中心を担ってくれた選手の年齢が上がってきて、それに若い選手が追随する形でその差は縮まっていても、まだ追い抜くところまではいっていない。

 だから勢いを優先して若い選手を選ぶのか、実績を大事にして経験値の高い選手を選ぶのか、そこについての正解はありません。だからこそ、最後は魂なんです。誰よりも勝ちたくて誰よりもアメリカをやっつけるんだという魂。こういう野球人生を送るんだという熱さのあるなしは年齢とは関係ない」

 栗山監督は"精神的支柱"が必要だと言っているのではない。勝つために、経験値の高い選手が必要なのかどうかの最後の見極めを今まさに行なっている、ということを言っているのだ。

 必要なのは、選手としての引き出しが多く、国際舞台で戦力として計算できる選手。さらに言えば1986年生まれのダルビッシュとの橋渡しになり、大谷、鈴木にも一目置かれる1987年度から1991年度までに生まれた選手。そういう存在が投打、ひとりずつは必要なのではないか──個人的にはそう考えている。

 適任は投手では田中将大、野手では坂本勇人だ。

 田中が入れば、ダルビッシュとNPBの若い投手たちをつなぐ役割をこなしながら、ブルペンに控えることで「あの元ヤンキースの田中がいる」と、メジャーリーガーを威圧することもできる。もちろんメジャーを知り尽くした田中の引き出しは準決勝、決勝のリリーフとしても十分、計算が立つ。なによりもWBCへの想いの強さが、魂を重視する栗山監督の価値観と一致するだろう。

 坂本は、おそらくショートで先発するのは難しい。源田をセンターラインの核だと考える栗山監督は、坂本には代打という役割を託すしかないかもしれない。それでも坂本なら技術的には無限大の引き出しがあり、ここ一番で代打の切り札という難しい仕事をこなしてくれるに違いない。国際試合での経験値も高い坂本は、源田のアドバイス役として、ともに表と裏で日本代表を支えてくれるはずだ。

 1988年度──昭和生まれの最後の世代がWBCにはまだ必要なのだ。田中将大と坂本勇人という投打のピースを加えた時、史上最強の日本代表が完成する、と言ったら大袈裟だろうか。

【著者プロフィール】石田雄太(いしだ・ゆうた)

1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Nunber』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。

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