斎藤佑樹は夏の甲子園2回戦で中田翔擁する大阪桐蔭との対戦が決まった瞬間、確信した。「一気に優勝が見えてきた」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 それが、横浜が負けて、大阪桐蔭との対戦になった。その瞬間、優勝が微かに見えてきた気がしました。もちろん、ずっと甲子園で優勝するんだと言い続けてきましたが、いつも引っかかっていたのが横浜高校の存在だったんです。全国優勝の前に立ちはだかる横浜高校というカベを、僕はものすごく高く感じていました。それほど横浜の存在は大きかった。

 だから、どうやって勝てばいいのかをずっと考えてきました。明治神宮大会で負けた駒大苫小牧に対しては、「1−0で勝つ」という何となくのイメージを持てていたのに、横浜に勝つイメージはまったくつくれなかった。だから、圧倒的に横浜の存在がイヤでした。その横浜が負けて、一気に山頂までのルートが見えた気がしたんです。

中田翔を抑えるイメージはできていた

 大阪桐蔭というのは、やっぱり中田くんを抑えないと勝てない。でも、僕はそういうスラッガータイプが揃っていた三高と戦うためにさんざん対策を練ってきました。だから中田くんをなんとなく抑えるイメージは持てていたんです。

 右のホームランバッターに対してはインコースを厳しく攻めて、外を遠く感じさせてからアウトコースのスライダーで勝負する......そんなイメージです。力でねじ伏せようとする相手に対して、僕にはどこか抑える自信がありました。

 第1打席の中田くんへの初球は覚えています。外の真っすぐを投げました。でも映像を見ると、キャッチャーの白川(英聖)がいきなり初球から中腰で構えているんですよね。おもしろいなと思って......いや、自分で言うのも変な話ですが、たぶんそれが白川のクセの強さというか(苦笑)。白川って普通はやらないことを平気でやっちゃう図太いところがあるんです。

 あの時、白川が中腰で構えたというのは、外の真っすぐを「間違っても低めに投げるなよ、高めに投げて来いよ」という意思の表れですよね。

 中田くんはパワフルなホームランバッターですから大振りの印象があるかもしれませんが、じつはうまいバッターだという印象を当時から持っていました。配球を考えながら、ときにはコンパクトなスイングで対応してくる。だから、もしかしたら初球に外へスライダーがくるというイメージを彼が持っていたとしたら、低めの真っすぐはうまく拾われるリスクがあります。それを僕に伝えたくて、白川は中腰で構えたんじゃないのかな。そのおかげで僕は初球から振ってくるだろうというイメージを強く持てて、よりいいところへきっちり投げなきゃという気持ちになれていたと思います。

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