広岡達朗の「監督論」。ビッグボス絶賛の理由、立浪采配への期待、落合博満の次期阪神監督にも言及 (3ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Kokei Yoshihiro

 常々広岡は、現代人の責任観念のなさを嘆いている。一国の首相であっても不祥事が発覚してものらりくらりと逃げ、未曾有の事態に陥っても歯切れの悪いものの言い方しかできない。だからこそ、新世代の指導者となった新庄、立浪には保身を掲げてやってほしくない思いがある。

 だからなのか、立浪監督はシーズン前に「石川昂弥に100打席、200打席打てなくても使い続ける」とメディアでハッキリ公言した。イモを引く気など微塵も見せない。選手たちは首脳陣をよく観察している。そうやって信頼関係を築いていくのだ。

弱いチームほど学ぶことがある

 今ネットでは、落合博満の発言が非常に注目されている。低迷している阪神の次期監督に対し、自身のYouTube番組でスタッフから監督オファーが来た場合の問いに「考えます」と現場復帰に色気を見せている。

 落合といえば、中日の監督時代の2004〜11年の8年間でリーグ優勝4度、2003年はリーグ2位からクライマックス・シリーズを勝ち抜き、日本一に輝くなど一時代を築きあげた。広岡から見た落合評を訊いてみた。

「落合は努力家であり、現役時代、部屋に篭ってずっと素振りをしていた。中日を強くしたのなら、今度は弱いチームに行って強くしたら、落合はより値打ちが出る。弱いチームになればなるほど因がたくさんあり、一つひとつ原因を究明にして学び、自分の糧にすることが大切」

広岡は、弱いチームほど学ぶことがたくさんあると口酸っぱく言う。

「監督は選手を教えるんじゃなくて、選手から教えられるんだ」

 自身が史上最弱と謳われたヤクルト、ロートル軍団の西武を抜本的改革による手腕で日本一に導いた実績から導き出された答えでもある。

「日本人は結果を出した人に弱い。落合は努力で三冠王を3回も獲った。そうなると、監督になって何も教えなくても勝手に周りはピリピリするのが日本人の特性。落合が監督を辞めたあとに高木守道が監督(第二次政権2011〜12)に就任し手伝ったんだけど、立浪に訊くと『落合さんは何にも教えてくれず、身体をつくることばかりでした』と言う。この身体づくりが基本であり重要なんだ。トレーニングでギューっと締める時期なのに、二重あごでいるピッチャーがいい球を放れるわけがない。そういうことを評論家は何にも言わない」

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