「投げすぎ」か「投げなさすぎか」。球数制限がすべてではなく、近年は「過保護すぎる」側面もある (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

「単純計算で、ヒットを10本打たれて無四球でアウト27個だったら打者37人。1人につき1球減らしたら、37球減るわけです。ただ投げるだけではなく、どうやったら球数を減らせられるかと考えて投げたら、また違った野球が見えてくると思うんですよね」

 以上を実践するのは難しいだろうが、試行錯誤する過程で投手として成長できる。そのためにはある程度投げることも必要だ。指導者が球数を過剰に気にして起用すると、そうした機会まで失われかねない。

 大事なのは、身体や感覚を含めて"自分"を知ることだ。吉見がそう気づくことができたのは、プロの世界に飛び込んで以降だった。

「投げることによって体がこうなるとわかれば、『じゃあケアしよう』となると思います。(プロ入り前の)トヨタ自動車時代に『胸を開け』と言われて、その理由も説明してもらったと思いますが、頭に入ってないんですよね。でも、ケガをしてから気づけました」

予防とケアでパフォーマンス向上

 吉見は少年野球をしている息子に、投げた日の夜はストレッチポールの上で胸郭のストレッチをさせている。インナーマッスルに刺激を入れ、血流をよくして回復を早めるためだ。

「胸を閉じて投げるのか、常に開いているかで張りも変わってきます。それはプロに入ってから知ったことです。投げ方は"クセ"なのでなかなか変わらないと思うけど、胸郭や手首のストレッチは誰でもできます。『投げ終わったあとにこういうメニューをやろう』とチームで決めごとにしておけば、いつか習慣になるはず。そうやって自分でできることを知っていくのが大事だと思います」

 胸郭をうまく使えれば、ヒジへのストレスを減らせると同時により強い球を投げられるようになる。結果、投球パフォーマンスも改善される。高島トレーナーは、そうした視点を持つことが大切だと説く。

「ケガの予防がうまくいけば、パフォーマンスは上がります。目指したいのはそこです。同じ100球を投げたとしても、ヒジへのストレス値が高い選手は、球の質が早く落ちてくるから終盤につかまりやすい。そういった観点を持ってもらえると、『ケガを隠しているようでは試合でいいピッチングをできないから、よくないよね』という考え方になると思います」

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