今年は清宮、藤浪も別チーム選手に弟子入り。「呉越同舟自主トレ」で急成長した男たち

  • チャッピー加藤●文 text by Chappy Kato
  • photo by Sankei Visual

 2月1日のキャンプインに向け、プロ野球選手たちはそれぞれ自主トレに励んでいる。「よその選手と仲良くするな」と言われた時代には考えられなかったが、球団の垣根を越え、他球団の選手と一緒に自主トレを行なうことは今や普通になった。

 こういう"呉越同舟自主トレ"には、どんなメリットがあるのだろうか? 過去の例も振り返りつつ検証してみたい。

2014年、東京ドームで宮本慎也(左)と握手する坂本勇人2014年、東京ドームで宮本慎也(左)と握手する坂本勇人この記事に関連する写真を見る

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 若手選手が、他球団の先輩選手に合同自主トレ参加を志願し、教えを請う"弟子入り"パターンは多い。それがきっかけでブレイクを果たしたケースもある。

 今年は、柳田悠岐(ソフトバンク)が佐賀・嬉野で行なっている合同自主トレに清宮幸太郎(日本ハム)が初参加。今年5年目の清宮は昨季、プロ入り後初めて一軍出場がなく、セ・リーグMVPに輝いた同期の村上宗隆(ヤクルト)とは大きな差がついてしまった。「ギータ塾」参加は何かをつかもうという必死さの表れだ。

 若手ではないが、ライバル球団のエースに「一緒にやらせてください」と頭を下げたのが、藤浪晋太郎(阪神)だ。なんと菅野智之(巨人)が主宰する宮古島合同自主トレに参加。阪神と巨人のライバル関係を思えば、気軽に「教えてください」とは頼みにくい相手だが、そんなことを言っていられない事情もある。

 藤浪は昨季、初の開幕投手に抜擢されたがローテを守れず、6月以降は中継ぎに配置転換。21試合に登板し3勝3敗、防御率5.21とまたしても不本意なシーズンとなった。今季はプロ10年目。高卒1年目から3年連続で2ケタ勝利を挙げながら以降は低迷が続き、年俸は6年連続でダウン。まさに崖っぷちの状況にある。

 今季、先発復帰と7年ぶりの2ケタ勝利を目指す藤浪の課題は、言うまでもなく「制球難」の克服だ。藤浪いわく、菅野は「日本でもトップクラスの、再現性の高い、安定感のある投球スタイルを持つ投手」。藤浪はさっそく菅野を質問攻めにし「投球動作の中での軸足の使い方」などについて指摘を受けた。巨人のエースと過ごした2週間弱、得るものは多かったようだ。

「菅野にメリットはあったのか?」という声もあるが、かつて同期の大谷翔平(エンゼルス)と並び称された男が輝きを取り戻し、巨人と阪神がハイレベルな優勝争いを繰り広げれば、セ・リーグはもっと盛り上がる。藤浪の熱意を受け入れた菅野の真意は、おそらくそこにあったのではないか。

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