今年は清宮、藤浪も別チーム選手に弟子入り。「呉越同舟自主トレ」で急成長した男たち (4ページ目)

  • チャッピー加藤●文 text by Chappy Kato
  • photo by Sankei Visual

 実績皆無の育成選手にもかかわらず、物怖じせずに質問を浴びせてくる千賀を見て、吉見も「コイツ、根性あるな」と気に入り、以降毎年、千賀と自主トレを行なうようになったのである。

 千賀は「真っ直ぐ以外にもうひとつ、決め球を増やしたいんです」と吉見に頼み込み、フォークの投げ方を教わった。吉見直伝の投げ方に独自の研究を加えて編み出したのが、人差し指だけを縫い目にかけ、真っ直ぐよりも強く腕を振る投球法だった。それが「お化けフォーク」である。

 真っ直ぐかと思いきや、急に打者の視界から消えるお化けフォークを武器に、球界を代表するエースへと成長していった千賀。2020年、ナゴヤドーム(現・バンテリンドーム)で行なわれた吉見の引退試合。シーズン中にもかかわらず、客席にはレプリカユニフォームを着て19番のボードを掲げる千賀の姿があった。

 このように、他球団の一流選手との自主トレがきっかけで、球界を代表する選手に成長したケースは多い。

 今年、柳田の自主トレに参加した清宮は、秋季練習で新庄剛志監督に「デブじゃね?」と言われた体を絞り、10キロほどスリムになった。新庄監督は「柳田キャプテン有難う!!」(原文ママ)とツイッターで直接謝意を示したほどだ。

 柳田は、自主トレに参加した清宮と安田尚憲(ロッテ)が今季一定以上の成績を残したら「ギータ賞」を贈呈すると宣言した。もし彼らが発奮して、ソフトバンク戦で打ちまくったらどうするのか? そんな疑問に対する柳田の答えが、実に格好よかった。

「打たれても、自分が打てばいいと思っている」

 ライバルチームの若手を成長させることで、自分への刺激にするという考え方で、坂本を鍛えた宮本と考えは同じだ。他球団の若手と自主トレをする意味は、この言葉に集約されている。

 新型コロナウイルスのクラスターが発生し「ギータ塾」が途中解散となったのは残念だが、清宮は柳田から何を感じ、何を学んだか? 清宮が「ギータ賞」を受賞し、ビッグボスが再び「柳田キャプテン有難う!!」とツイートするようなことになれば、今年のパ・リーグはさらに面白くなるはずだ。

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