川端慎吾の打撃は「川上哲治レベル」。八重樫幸雄は日本一を決めたヒットを「わざと詰まらせた」と分析 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Kyodo News

【川上哲治レベルの匠の技】

----日本シリーズでも、第5戦はアウトにはなったけれど、オリックス・平野佳寿投手の甘いフォークボールを見逃さずにライトに弾き返しました。そして、第6戦では延長12回に日本一を決める決勝タイムリーヒットを放っています。

八重樫 第6戦の決勝タイムリーこそ、2021年の、いや、プロ野球選手としての川端慎吾の集大成じゃないですかね。究極の技が詰まったヒットだったと思います。

----「究極の技」について、詳しく教えてください。

八重樫 しっかりとバットを振りきった上で、わざと詰まらせて逆方向、相手ショートのうしろにポトリと落とす。あれは単に「詰まった当たりがたまたまいいところに落ちた」のではなく、「技術でショート後方に打ったヒット」です。技術的には左手を上手に使ってはいるけど、むしろ全身を上手に使ったヒットですよ。

----決していい当たりではなかったけれど、それでもヒットにする長年の技術の集積こそ、あのヒットだったんですね。

八重樫 自分のポイントではなくても、しっかりと振りきってヒットにする。決してボールに合わせにいってないんです。「どうやってバットを振れば、どこに打球が飛ぶのか」ということを理解して、それを実践した。これはもう「令和の川上さん」レベルですよ。

----「ボールが止まって見える」という名言を残した「打撃の神様」川上哲治さんクラスの技術ですか!

八重樫 そう言いきってもいいんじゃないかな? あの日本シリーズ第6戦の決勝タイムリーヒットは、それぐらいのすばらしいヒットだったと思います。代打専門として頑張ってきた、慎吾の技術と執念が生み出したヒットでしたよ。

----日本一が決まったあと、大粒の涙をこぼしていましたね。

八重樫 自分の体のこととか、これまでのリハビリのこととか、日本一にかける思いとか、いろいろなものがこみ上げてきた涙だったんでしょうね。今後については、まだまだ若いんだから、本人が言っているようにもう一度レギュラーを目指してほしい。体が動く限りは1年でも長く現役を続けてほしいな。そして、現役引退後はその技術をぜひ後進に伝えていってほしいです。

(第99回:石川雅規は「こんなに小さくて大丈夫か?」から現役20年。活躍の要因は?>>)

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