今オフ移籍の可能性は中日・又吉のみ。なぜ日本のFA制度は活用されないのか? (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【元日本ハム3人のノンテンダーFAとは?】

 対して、予期せぬ形で市場に出たのが、西川遥輝、大田泰示、秋吉亮という元日本ハムの3人だ。「ノンテンダーFA」という、日本では聞き慣れない扱いとなった。

 MLBではよくある手法で、球団から選手に来季の契約の意思表示をしないことを意味する。つまり「自由契約」となり、国内外のあらゆる球団と自由に交渉できる。NPBで言うFAとは異なり、獲得する球団に補償が発生しないため、選手にとっても移籍しやすいことがメリットだ。

 では、なぜ日本ハムは主力クラスにこうした対応をしたのか。稲葉篤紀新GMはこう説明している。

「選手にとって制約のない状態で、海外を含めた移籍先を選択できることが重要と考えた結果です。ファイターズとの再契約の可能性を閉ざすものではありません」(11月17日付の『日刊スポーツ』電子版より)

 他媒体の日本ハム担当記者によると、稲葉GMはこれ以上の説明は「できない」とし、多くを語らなかったという。明言しない以上は推測するしかないが、大田はニッポン放送のラジオ番組『The Deep』で「人生のなかでもこういう経験はしたことがないくらい、びっくりしました」と寝耳に水だったことを明かした。

 本来、FA(Free Agent)は自由契約と同義だが、日本では「自由契約=戦力外」のようにネガティブな文脈で捉えられることも多い。自由契約ではなくノンテンダーFAと発表することで、球団、選手双方にとって体裁を整えたのではないだろうか。

 NPBの野球協約はMLBのそれを参考にしているが、両者には異なる仕組みが様々ある。

 たとえば、年俸調停制度だ。MLBでは基本的にサービスタイムが2年目までは年俸を抑えられ、3年目以降に調停権を獲得すればアップ率が高まり、FAになれば大型契約を狙いやすくなる。

 逆に、球団は選手の年俸と価値が見合わないと考えた場合、サービスタイムが6年に達する前に自ら放出することがある。これがノンテンダーFAの活用例だ。つまり、そこに選手の意思は介在していない。

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