日本シリーズ第3戦の勝敗を分けた2つのポイント。元阪神・岩田稔がヤクルト高津監督の采配も分析 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 まさにこの7回裏は、そうした状況で生まれた一発でした。サンタナが見事だったのは、強引に引っ張りにいかず、逆方向に打ったこと。なんとかうしろにつなごうとする意識が表れていました。コースに逆らわない完璧な一本でした。これでシリーズ初ヒットも生まれましたし、4戦目以降も気持ちよく試合に入っていけるのではないでしょうか。

 もうひとつのポイントが直後の守りの場面。ヤクルトは前のイニングで2死満塁から登板してピンチを凌いだ石山がそのままマウンドに上がりました。シーズン同様、清水(昇)につなぐものだと思っていたので驚きました。イニングまたぎはただでさえ難しいですし、ましてや日本シリーズでこれだけ緊迫した試合展開。まさに勝負継投でした。

 石山とすれば、2死満塁という絶体絶命のピンチを三振で抑えて、テンションは最高潮に上がったと思うんです。そしてベンチに戻り、「次の回も頼んだ」となるのはかなりきつかったと思います。

 それでも石山が8回表を3人できっちり抑えて、流れを完全に引き寄せました。難しい登板だったと思いますが、冷静に三者凡退で切り抜けたのは、抑えをやってきた経験が生きたと感じました。

 このシリーズを見ていると、高津(臣吾)監督はシーズンの戦いにこだわらず、状態のいい選手を使うという起用法を徹底しています。第3戦の石山の続投はまさにそれで、その判断はものすごく難しいと思うのですが、ここまでの戦いを見ているとそれが功を奏しているように思えます。

 それにヤクルトのベンチの雰囲気というか、ベンチの声のかけ方なども含めて、起用する選手のコントロールをうまくできているんだなと感じました。出た選手がいい仕事をするというのは、チームの雰囲気がいい証拠。今年のヤクルトには、そうした印象をずっと受けています。

 これでシリーズはヤクルトの2勝1敗となりましたが、両チームの実力は本当に拮抗しています。今日の勝利でヤクルトが有利になったことは間違いないですが、今後、流れがどちらにいくかは、まったく読めません。

 ひとつ言えるのは、こうした拮抗した戦いはミスしたほうが負けに直結していくということ。ミスが出ないように、しっかりした野球をするチームが日本一に近づいていくのではないかと思っています。

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