ソフトバンクが「今宮健太の後継者」を指名しなかったワケ。答えは2023年のドラフトにあり⁉ (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 木村を左腕不足の西武や、地元・北海道の日本ハムに持っていかれたら、のちのち厄介な相手になると思ったのか......そこまではわからないが、ソフトバンクは水野の獲得を見送った。結局、アマチュアナンバーワン遊撃手の水野は、日本ハムが3位で指名した。

 ソフトバンクは昨年のドラフトで青森山田の川原田純平を4位で獲得している。その川原田は今シーズン途中に三軍から二軍に昇格し、夏場あたりからウエスタンリーグにも出場している。

 高卒1年目の選手としては順調に成長を続けているのだろうが、今宮の後継者となると、たとえ高卒入団であろうとも、1年目からいきなり一軍をうかがう位置につけられるほどの圧倒的な走攻守が必要となる。

「今宮の後釜がつとまりそうなショートなんて、今年なら水野ぐらいだろうし、来年もどうだろう......。FAってわけにもいかないだろうし、どうするんだろうね」

 ある球団のスカウトがそうつぶやくように言い放った言葉を聞いて、ふたりのアマチュア選手の名前が浮かんだ。

 ひとりは横浜高校の緒方漣(1年)だ。今年夏の甲子園では「1番・ショート」の重責を担い、初戦の広島新庄戦でサヨナラ逆転本塁打の離れ業をやってのけた。

 緒方を初めて見たのは、今年春の神奈川県大会。入学したばかりだというのに、まずフィールディングのうまさに舌を巻いた。打った瞬間、もうスタートを切っているような抜群の反射神経と打球へのタイミングの合わせ方は、教えてどうこうというものではない。緒方にはその「天性」が備わっている。

 それ以上に驚かされたのが、実戦での勝負度胸だ。当たり前のように打球を処理して、アウトを重ね、ピンチの場面でも平然と自分の仕事をこなす。1年生らしくないといえば、これほど「らしくない」選手もいないが、逆にこんなに頼もしい選手もいない。

 春の時点では、まだバッティングに非力感が漂っていたが、どんどん力強くなり、夏の県大会の頃にはボールを長く見て、呼び込みながら豪快にバットを振り抜く"スラッガー"のスイングになっていたから驚いた。

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