ヤクルト雄平はなぜ引退試合後も練習を続けるのか。「今の自分の体がなくなってしまうことが怖い」 (2ページ目)
2019年のキャンプではこんなことがあった。二軍キャンプ中だった若手の渡邉大樹に「雄平選手は(一軍キャンプで)かなりバットを振り込んでいましたよ」と声をかけると、「僕のほうが振っていると思います」と返ってきた。ちなみに、ふたりは一緒に自主トレをしている間柄だった。
そして雄平に渡邉の言葉を伝えると、真顔でこう言った。
「いや、僕のほうが絶対に振っているはずです」
なんという負けず嫌い......と思わず笑ってしまったが、雄平を支えているのは練習なのだということを再確認した。
その2019年シーズン、雄平は「ひとり早出練習と表現してください」と、チーム練習前のティー打撃を欠かすことなく続けた。雄平がその時に発する言葉は、真剣さゆえに思わず笑ってしまうことも多かった。
「ボールは目で見るんじゃなくて、体で見る。それも体の芯で見る。よくわかんないけど......」
「僕、試合に出られますかね? いい風が吹いているけど、出番はないだろうなぁ」
そんな数々の雄平語録のなかでも、「うまくいかないなぁ。でも、これを続けていればきっといいことがある。そのためにもフォームは変えない」という言葉は強く印象に残っている。
「模索を続けていけば、今年の僕のバッティングが見えてくると思ったので......。いいことが起こるためにはトライすることが必要で、もっと打てる自信があるし、もっと新しいものを見つけたいんです。結果、フォームは変えましたけど、それでよかった(笑)」
雄平と石井琢朗打撃コーチ(現・巨人野手総合コーチ)のティー打撃を眺めるのも楽しい時間だった。前日の打席を振り返り、今日の対戦投手について対策を練るのだが、そのやりとりはユーモアに溢れていた。
「打つ時に顔の軸がブレていることに気がつきました」(雄平)
「おまえは心の軸がブレるからいけない。自分から悪い方向へ行ってしまう」(石井コーチ)「アーッ(苦笑)」
「ほかの選手のバットも触ったけど、おまえのバットが一番扱いやすい」(石井コーチ)
「この形はバランスがいいんですよね」(雄平)
「おまえは扱いづらいけどな(笑)」(石井コーチ)
「アーッ(苦笑)」
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