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ヤクルトに浸透する「青木イズム」。稀代のヒットメーカーが姿勢で伝えてきたこと (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Koike Yoshihiro

 前出の石井コーチも青木の貢献について、次のように語っていた。

「チームが苦しい時って、選手同士でまとまる力が大事なんです。青木は野手最年長ですが、おとなしいチームのなかで先頭になって声を出してくれている。そういう青木の姿を見て、ほかの選手がどう感じ取ってくれるかですよね」

 しかし、物語のようにスムーズに物事は進まない。

 翌年は球団ワースト記録に並ぶ16連敗を喫するなど最下位に沈み、昨年も5位に12ゲーム差とダントツの最下位でシーズンを終えた。そんな状況のなかでも青木は常に前を向き、声を出し続けていた。

 今年のシーズン前、青木はこのように抱負を語っていた。

「勝っている時ってあまり疲れないんですけど、負け続けると本当に集中力が切れそうになるし、キツいですね。でも、だからこそ集中力をもってやらないといけないわけで......。やっぱり勝っているなかでやりたいですし、今年は消化試合のないシーズンにしたいですね」

 青木の野球に向き合う姿勢は、シーズンを重ねるごとにチームに浸透している。ゲーム中、村上宗隆を筆頭に選手たちの声が響き渡り、キャンプ中は野手に限らず投手からも「青木さんからこういう話を聞きました」という声を何度も聞いた。

 青木はこれまでの経験を後輩に伝えることも「大切なこと」という。

「僕も2年目、3年目の頃は、古田(敦也)さんなど先輩方にいろんな助言も求めました。アメリカでも自分のキャパシティのなかでは対処できないことだらけで......もちろん自分で乗り越えようとするんですけど、本当にどうにもならない時が何度もあって、その時はイチローさんなどに助言を求めたこともありました。

 若手は絶対にきっかけを探しているので、その手助けになれたらいいですよね。でもそこからは自分で乗り越えていくものなので、何事もあきらめずにトライして、自分のものにしていってほしいですね」

 外野手の山崎晃大朗は今日までの4シーズン、青木に何度も質問をしてきたが「今までのように何でもかんでも聞くことはやめました」と言った。

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