田中将大は「ハリネズミ」。楽天・石井一久監督がGMとの違い、チームづくりを語る (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

── 監督として接してみて、田中投手の人柄についてはどう感じていますか。

「まず、人間力の高い選手だなと思いました。ある程度のキャリアを積んできたらツンケンしているところが見えても不思議じゃないんですけど、そういうところがまったくない。あの歳(32歳)ではあまりいない人格者だなと思います。いろんな人、いろんなシチュエーションに対応できる能力がありますし、そういうところは当然、野球にも応用しているんだろうなと思いました」

── 田中投手もチームメイトに「気軽に」と話していたように、2013年の24勝0敗でイーグルスを日本一に導いて、ヤンキースでは6年連続2ケタを挙げた......そうした数々の伝説から、どうしてもチーム内で神格化されてしまうところも出てくるんじゃないかと思います。そういう空気を和らげる必要性は感じていますか。

「正直、僕はそれが必要なのか、必要じゃないのかを見極めようとしていました。でも、そこも彼はわかっているんですよね。いつも自分から一つ落としにかかるんです。挨拶にしても、練習中も、常に一つ落とした雰囲気を出せる。ほっといても出てしまう存在感を、あえて示そうとしないんです。ほら、ハリネズミってそうじゃないですか。針を立てて威嚇する時と違って、針が立っていない丸いハリネズミはかわいいでしょ。田中はいつもそういう存在でいようとしています」

── 田中投手はハリネズミですか(笑)。

「それってすごいことなんですよ。だってマウンドに立てば針を立てて、今にも刺されそうなほどの張り詰めた、周りを寄せつけない空気を出せるピッチャーなのに、みんなといるときは笑ってほしいという柔らかい雰囲気に包まれる。だいたいは下の選手が気を遣うより上の選手が気を遣うほうがいろんなことがうまくいくんですけど、ああいうキャリアを持っている選手が努力して周りを見ようとしてくれるのはありがたいし、チームにとってもすごくいいことだと思います」

── 田中投手のギャグセンスはいかがですか。

「彼は僕とは笑いのツボが違うらしく、みんなに笑ってほしいなっていう時、若干、ちょっとだけ、みんな、あんまり笑ってなかったかな、と......いや、別にスベっているわけじゃないんですけど、そこが今の彼の課題かなとは思います(笑)」

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